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気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

峰尾香里先生のコラム 『Winding roadの果てに - ある通訳者のひとりごと』 フリーランス会議通訳者。アイ・エス・エス・インスティテュート東京校英語通訳科講師。
University of Massachusetts Lowell MBA
旅行会社、厚労省の外郭団体での勤務を経て、英語通訳者として稼動開始。金融、IT、製薬の3分野で社内通翻訳者として勤務後、現在は経営戦略、国際会計基準、財務関連を中心に様々な分野で通訳者として活躍中。

第2回:はじめての通訳訓練

前回の第1回から早1ヶ月。みなさまお変わりないでしょうか?
この時期、通訳者にとって最も怖いのはインフルエンザの罹患です。今では予防と気合(?)でインフルエンザにかかることもほぼなくなりましたが、通訳学校時代は気の緩みからかはたまた勉強漬けで体力が落ちていたせいか、インフルエンザで2週間ほど声が出なくなってしまったことを思い出します。それでは、前回第1回の最後でも予告しました通訳学校での学習体験についてお話ししたいと思います。

◆はじめての授業
Placement Testの結果、通訳訓練の基礎のクラスに入学することになりました。それでも専門学校時代からほぼ10年のブランクを経ての英語の勉強、そしてはじめての通訳訓練はかなり刺激的なものとなりました。クラスは、大学生、社会人、専業主婦と年齢も職業もバラエティに富んでいましたが、ほぼ半数がプロの通訳者を目指していると聞いて、「場違いな所に来てしまった」と心底思いました。実際、shadowingやメモ取り無しの逐次での訳出訓練が始まると、経験者との力の差は歴然でした。

◆学校に通うメリットは?
当初は必ずしもプロの通訳者を目指していたわけではなかったのですが、1) 独学とは違って自分のレベルが把握できる。2) 自分だけではなく他のクラスメートへの先生の批評を通じて何倍もの情報を得ることができる。3) 強制的に勉強する習慣を作って、より勉強が継続しやすくなる。といった、通学ならではのメリットを見出してからは、クラスメートとの実力の差や自分の訳出の欠点に、必要以上に落ち込むことはなくなりました。そして何よりもクラスメートの勉強への熱意に刺激されて、「進級して上のクラスでもこのメンバーと一緒に勉強したい!」とのモチベーションは益々高まっていきました。

◆勉強時間をどう捻出するか?
入学案内の説明では、授業の予習復習にかける時間の目安は「おおよそ授業時間×3倍」とありました。1回2時間の授業が週2回ですから、1週間で12時間。これを多いとみるか少ないとみるかは個人差があると思います。単に時間だけの問題ではなく、教材の復習を納得がいくまで繰り返す、与えられた情報をもとにグローサリー(用語集)を作成するなどしてでき得る限りの情報収集に努める、何より自信を持って授業に出られるように、自分が納得のいくまで復習と事前の勉強をするといったことを、常に心がけていました

しかし、ここまで準備しても実はまだまだ足りなかったのです。基礎レベルでは、語彙力・文法力・文章構成力・発音・自然な英語・自然な日本語での訳出、そして何より、原文の深い理解、この全てにおいて完璧ということは、まずありません。自分の欠点はだれでも見たくはないと思いますが、ここから目を背けてはその先には進めないということを、このあと痛いほど思い知らされることとなりました。

今回は少しかたい内容になってしまいましたが、次回第3回は、通訳学校での授業の後編と、突然チャンスが巡ってきた通訳デビューについてお話したいと思います。
それではまたお会いしましょう!

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