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塚崎正子先生のコラム 『ある実務翻訳者のつぶやき』 お茶の水女子大学文教育学部外国文学科英文学(当時)卒業。電気メーカーに入社後、フリーランス翻訳者となる。移動体通信、コンピュータ、医療機器を中心とした分野に関する各種マニュアル、学術論文、契約書などの英日/日英翻訳を手がける。

第2回:翻訳の勉強方法 ~英語から日本語へ~

今回は翻訳の勉強方法です。細かいテクニック的なことは関連本に譲るとして、主に勉強していくうえでの方向性のようなものを示したいと思います。勉強の手段は独学、通信、通学、OJTなど様々ありますが、基本は同じなので、それぞれの立場で参考にしてください。

まずは辞書と友達になりましょう
どんな素晴らしい訳も、文法の知識に基づく構文の正しい解釈なくしては得られません。翻訳の勉強を始められたばかりのころに多いパターンですが、原文(英語)に構文的に理解できないところが多少あっても、単語レベルでは理解できているので、自分がわかっている範囲で筋道が通るように、訳文(日本語)を仕上げてしまう人がいます。

しかしこれには危険が伴います。自分にとってなじみのある分野なら、この方法でも「あたらずといえども遠からず」な訳文になる可能性がありますが、なじみのない分野だと、あらぬ方向に筋道を通してしまうことになります。

翻訳を始める前に、まず、翻訳対象の英文を構文面から説明できるか確認してみてください。疑問点を解消するためには文法知識が必須ですが、何も難しい文法書を最初から読む必要はありません(もちろん、読むに越したことはありませんが…)。まずは、ご自分の辞書を100%活用しましょう。学習用の辞書であれば、文法事項も説明しています。大丈夫と思っている単語でも、思わぬ使いかたや意味があったりします。

疑問がなくなったら、始めて翻訳にとりかかります。こうすると、少なくとも致命的な誤訳を避けることはできます。辞書をひく手間を惜しんではなりません。

良質な日本語をインプットしましょう
とはいえ、文法の知識があるからといって、素晴らしい訳が必ずしも生まれるわけでないところが翻訳の難しさです。中学校での英語の授業を思い出してください。

There are two apples on the table.

これを「テーブルの上に2個のリンゴがあります」を訳したと思います。でもよく考えてみると、普通「リンゴが2個あります」と言いますよね。これは数と名詞の関係が英語と日本語では違うことが原因です。

このように私たちは初期の英語学習時に、直訳を徹底的に叩き込まれたおかげで、自然な日本語表現からずれてしまったものがあります。中学校で受身形を初めて訳した時、違和感を覚えませんでしたか?日本語の表現力を高めるうえで大事なのは、この違和感を大切にすることです。

また、実務翻訳の特性として、Web上の広告のようなものから、製品の取扱説明書、学術レポート、契約書、特許など、求められる日本語の文体は多岐にわたることが挙げられます。そのためには、新聞、雑誌などから多種多様な日本語をインプットし、自分の中で日本語のバリエーションを増やしていくことが大事です。

良質な日本語に数多く触れることで、自然な日本語の流れというものが身についてきます。そうなれば、作成した訳文を声に出して読むと、不自然な箇所が明確にわかるようになります。

日本語に敏感になりましょう
インプットしたからといって、安心してはいけません。翻訳以外の日々の暮らしでも常に日本語を意識することが大切です。

あたりを見渡してポスターや掲示物に変な日本語はありませんか?テレビのテロップに「大地震の起こる確立」なんて一瞬映りませんでしたか?ショッピングに行って、「青のTシャツをお召しになっている3歳のお坊ちゃま」という店内放送に変な感じを受けたことはありませんか?いつ、どこででもアンテナを張りめぐらし、突っ込みを入れるくらいの気持ちで過ごすと、訳文の日本語もずいぶんと変わってくるかと思います。ただし、変な人と思われるといけないので突っ込みは秘かに…。

長くなりましたので、日本語から英語は次回へ。

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