ホーム  >  Tips/コラム:プロ通訳者・翻訳者コラム  >  塚崎正子先生のコラム 第4回:辞書のことあれこれ

Tips/コラム

Tips/コラム

USEFUL INFO

プロ通訳者・翻訳者コラム

気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

塚崎正子先生のコラム 『ある実務翻訳者のつぶやき』 お茶の水女子大学文教育学部外国文学科英文学(当時)卒業。電気メーカーに入社後、フリーランス翻訳者となる。移動体通信、コンピュータ、医療機器を中心とした分野に関する各種マニュアル、学術論文、契約書などの英日/日英翻訳を手がける。

第4回:辞書のことあれこれ

4月と言えば進学、進級の季節。書店の店頭にも辞書が並び、これを機に、辞書を買い替えられる人も多いかと思います。というわけで、今月は辞書のお話です。

ちなみに私が学生の頃、クラスのみんなが申し合わせたように持っていたのが、研究社の「新英和中辞典」。あの黄緑色のカバーを見ると、今でも懐かしく感じます。当時は、これが英語学習に特化した唯一の辞書でした。ただ、このコラムでは、学習のための辞書ではなく、翻訳の仕事をしていく上で、私のお気に入りの辞書を書きたいと思います。

英語を書くときには手放せない「新編 英和活用大辞典

この辞書は普通の辞書と少し異なり、名詞を中心としたコロケーション(連語)が紹介されています。例えば、「…に関する報告書を提出する」の英文を、report(名詞)を使って書きたいとします。この辞書でreportを引くと、reportを目的語とする動詞や、reportの後ろに続く前置詞が列挙されています。もちろん同じようなことは、Googleの検索を利用してネット上で確認することもできますが、信頼性や即時性の点で、こちらの方が遥かに優れています。

職場のデスクに常備したい「ビジネス・技術 実用英語辞典 英和・和英

編者である海野ご夫妻の名前から、俗に「海野さんの辞書」と呼ばれています。
編者が翻訳者であるためか、いかにも実際の現場で遭遇しそうな例文が収録されています。内容もビジネス関係と技術関係が網羅されており、例えば派遣先などで、ちょこちょことした翻訳をする機会がある人には、最適かと思います。ただし、詳しい訳語が出ているわけではないので、リーダースとか、ランダムハウスといった通常の英和辞典と一緒に使うことで効果を発揮すると思います。

辞書の形態:書籍版、電子版、CD–ROM版

現在、辞書は様々な形態で売られています。おそらく大多数の方は、電子辞書の形で複数の辞書を購入されているかと思います。電子辞書は携帯性に優れ、特に通訳の方など、様々な場所へ出かけて行って仕事をする人にとっては最適な形態だと思います。ただ、書籍版の一覧性も捨てがたいものがあるので、決まった場所で仕事をする機会が多い方は、選んでもよいかと思います。また、辞書でうまく訳語を見つけられないという人は、書籍版を試してみるのもよいかと思います。電子版だと、どうしてもさらっと流すように読んでしまうことがあるからです。

私のような在宅翻訳者はどうかというと、辞書はCD–ROM版で購入し、自分のPCのハードディスクに格納します。その上で、串刺し検索ソフト(DD–WinやJammingなど)を使用して、PC上で一括検索しています。もちろん、同じようなことは電子辞書でも可能ですが、辞書引きも含め、全てPC上で完結させたいという翻訳者の性(さが)でしょうか…。

オンライン辞書の活用

ところが、上で書いた辞書の形態の違いを吹き飛ばしてしまったのが、インターネットの普及によるオンライン辞書の登場です。有名どころでは、みなさんおなじみの英辞郎。私も専門外の仕事が来た時に、いつもお世話になっております。また、OxfordLongmanなど有名どころの英英辞書も、オンライン上で利用できます。しかも無料で!串刺し検索が可能なサイト(Weblio)もあります。

辞書は生き物だと思います。同じ辞書でも時代に合わせて改訂されていきますし、技術の進歩に伴い、様々な形態の辞書が登場してくるでしょう。これからはスマートフォンでの辞書アプリが中心になるのではないでしょうか。

どんな場所でどんな使い方をしたいかで、最適な辞書というものは、人それぞれ違ってきます。皆さんがこれはと思える辞書に出会えるよう、祈っています。

Copyright(C) ISS, INC. All Rights Reserved.