ホーム  >  Tips/コラム:プロ通訳者・翻訳者コラム  >  藏持未紗先生のコラム 第9回:社内通訳者とフリーランス

Tips/コラム

Tips/コラム

USEFUL INFO

プロ通訳者・翻訳者コラム

気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

藏持未紗先生

藏持未紗先生のコラム 『流れに身を任せて』 高校時代に1年間アメリカに留学。国際基督教大学教養学部を卒業。2008年にアイ・エス・エス・インスティテュートに入学。在学中よりメーカー、製薬会社等で社内通訳者として経験を積む。同時通訳科を経て、現在はフリーランス通訳者として稼働中。

第9回:社内通訳者とフリーランス

9月になり、通訳業界は秋の繁忙期に入り、忙しさを増してきています。季節の変わり目でもありますし、忙しい時こそ体調管理をしっかりと行うことも通訳者としての大切な仕事の1つです。

前回は、通訳者としてのキャリアの積み方についてお話しました。私の場合は、社内通訳者として経験を積んでからフリーランスで稼働を始めましたが、中には社内通訳者としてずっと稼働されている方もいらっしゃいますし、最初からフリーランスという形態で稼働されてきた方、社内通訳者からフリーランスになった後、また社内通訳者に戻った方など、人によって働き方は様々です。そこで今回は、私が感じた社内通訳者とフリーランスの違いについてご紹介します。

まず、社内通訳者の場合は派遣社員や契約社員として雇用される場合が多く、通常3か月~1年毎に契約更新の機会があります。企業によって、人付き、部署付き、プール制など責任範囲が異なります。人付きや部署付きの場合は、特定の人や部署専任の通訳者になりますので、経理やITなど、特定の分野の内容が多くなる傾向にある一方、プール制の場合は、組織全体で通訳者を共有しますので、分野が多岐にわたる傾向にあります。ただし、同じ人付きであっても、CTO付はIT関連の内容が大部分を占める可能性が高いのに対し、社長付は社内外を含め様々な内容に触れる機会がある可能性があるなど、一概には言えません。

社内通訳者の場合は、どのような雇用形態であれ、一定の期間、1つの企業の中で仕事をすることには変わりありませんので、連続性があり、その企業や業界に関する知識を深めることができます。内容に関して分からないことがあったとしても、周りに確認できる人がいることも大きなメリットです。また、万が一、会議中に通訳した内容が上手く伝わらなかったとしても、後から確認してフォローすることもできるでしょう。そして何よりも、組織の一員として人間関係を築き、慣れた環境で同じ目標に向かって仕事ができるのは楽しいものです。

一方、フリーランスの場合は企業には属しませんので、毎日異なるクライアントとお仕事をすることになります。様々な業界や企業に触れることができますし、普段はなかなかお話を伺う機会のない著名な方のお話を聞くことができる場合もあります。また、柔軟にスケジュールを調整することができるのもフリーランスの魅力でしょう。一方、新しい業界や企業のお仕事をいただいた際は、準備や勉強に多くの時間を割く必要があります。そして、クライアントの期待に応えられたかどうかによって、指名につながる場合もあれば、二度とお声がかからないこともあり得ます。

私はどちらも経験してみて、良く言えば好奇心旺盛、悪く言えば少々飽きっぽい性格のため、毎日違う環境で、様々な分野に触れ、色々な人に会うことができるフリーランスという形態が自分には合っているように思います。私の知り合いの通訳者さんの中には、毎日新しい環境で知らない人に囲まれて仕事をするのがストレスで、社内通訳者の方が合っているという方や、男性の通訳者さんでお子さんが産まれたばかりなので、今は比較的安定している社内通訳者の仕事をしているという方もいらっしゃいます。また、フリーランスで稼働している方で、特定の業界の知識や経験を積みたいので、期間限定で社内通訳者の仕事に就き、またフリーランスに戻られた方もいらっしゃいます。

ご自身の性格や希望する働き方、そして通訳者として何を目指すのか、ということを考えたうえで、両者の違いを理解し、選択をしていただければと思います。

Copyright(C) ISS, INC. All Rights Reserved.