ホーム  >  Tips/コラム:プロの視点  >  寺田千歳のプロの視点 第1回:異国での通訳とは旅人...?

Tips/コラム

Tips/コラム

USEFUL INFO

プロの視点


『欧州通訳の旅、心得ノート』 一緒に通訳の新しい旅に出ませんか? 寺田千歳

第1回

異国での通訳とは旅人...?

初めまして、寺田千歳と申します。
今回はこのコラムを通じて、私の長期間に渡る欧州での生活と、ちょっと稀なケースかもしれない3カ国語通訳の経験から、 日本で欧州出身の役員付き通訳者、また、欧州への出張同行する人たちにひょっとして役立つかもれしれない内容を発信させていただこうと思いました。 欧州通訳とは出張ベースで仕事をします。出張先では毎回新たな出会いや発見がつきものです。そこで今回のコラムも旅になぞらえて、 コラムを通じて欧州通訳の旅に出てみませんか?私が初期に経験したハラハラドキドキも、経験と工夫を重ねることで、さまざまな対応方法が整理されていきました。 それが、大切な財産として、心の中のノートに記録されています。そこから、皆さんに役立つようなエッセンスを取り出してご案内していきます。

  

私の欧州原体験、それは14歳の夏、母と参加した欧州周遊ツアーでした。14日で10カ国を巡る強行スケジュールでしたが、子供ながら生の英語を聞こう、 学校で習っている英語で話しかけてみようとわくわくしていましたので、現地で驚くことになりました。それは、イギリス以外は英語が通じないということでした。 英語以外、書いてある言葉がまったく読めなかったのです。そして、英語に似ているようで違うフランス語の優雅な綴りに魅かれ、 「将来はいつか欧州に行って英語以外の外国語もわかるようになりたい」とひそかに夢を持つようになりました。

 

その後、南ドイツの大学へ欧州政治研究のため留学しましたが、そこは、欧州各国や北米、韓国や台湾にいたるまで数千人の留学生が集まる学生コミュニティで、 留学生の間ではランチタイムは「ドイツと自分の国はどこが違うのか?ヨーロッパとは何か?」などが話題でした。世界地図で見るとヨーロッパのエリアはさほど大きくないのに、 多数の異なる民族の人たちが小中の国を作り、それぞれ異なる言語を話しています。数メートル先の隣国は言葉もルールもがらっと変わるという、海に守られた日本と真逆であること、 異国が身近にあることが面白いと感じました。ドイツ・スイス間を列車で移動中、歩いて国境を越える町があります。 線路は繫がっており、ドイツ側の駅で乗客は降ろされ、徒歩で国境通関所を越え(というか通り過ぎる)、スイス側の同名の駅でさっきと同じ列車に戻るといった具合です。 国境地帯では国境を越えてバスが運行していることもあり、そのままバスの中で国境を越えてしまい、パスポートをホテルに置いてきたことに気づきドキドキしたこともあります。 ドイツのベルリンから1時間ほどの国内移動に乗った列車が、たまたまベルリン発ウィーン経由ブダペスト行きの国際長距離急行で、 ドイツ・オーストリア・ハンガリー鉄道とシートやデザインがまるで違う3カ国の3種類の車両が連結されていて、 さあどれに乗ろうか?と迷ったことがありました。オーストリア車両が一番新しくてシートが一番ふかふかだったと記憶しています。ハンガリー語は解さないのでハンガリー車両に乗ると緊急時に困るだろうなと思いました。 国境毎に切り離されてどんどん短くなっていくのでしょうか。フランス・ドイツ国境の町ザーブルッケンからドイツ国内移動に列車に乗ったらフランスから乗り入れている急行列車で一等車両にも関わらず、 トイレは故障中。ベレー帽姿のフランス人車掌さんがおいしそうなサンドイッチセットを無料で配っており、ドイツ人車掌と交代する前にフランスから乗ってきた乗客に「食事は受け取りましたね?」 と確認していました。ドイツで乗車した私と目が合うと、「ドイツではこのサービスはありません」とばっさり。(はい、ドイツなので電車が故障せず走りさえすれば、食事などこの際どうでもいいです。。と心の中で苦笑) フランスの白いパンのサンドイッチがとても美味しそうで残念でしたが、この違い面白いです。

  

それでは、「ドイツは、ヨーロッパは、日本とどう違うのか。ドイツ人、ヨーロッパ人とはどういう人たちなのだろうか。」、 実際に通訳として欧州各地で国籍や文化的背景が異なる人たちと仕事をしてみて、ヒントを得ることができました。 欧州で日英通訳をする場合、英語を母語としない方の英語を聞くことの方が多く、なかなか大変でした。 例えば、日本に和製英語があるように、ドイツでも新たなモノや概念が生まれると英語から言葉を借りてきて、ドイツ語の中で日常的に使われている言葉が無数にありますが、 ドイツ語独自の使い方をする場合もあります。ドイツ人が英語を話す時、この英語のような顔をした独製英語を使ってくることも多いので要注意です。

  

例えば Handy (= Mobile phone) , Notebook (= Laptop PC), Body Bag (= Messenger bag) , Public Viewing ( = Outdoor screening ), Beamer (= Projector) , Shooting (= Photo Shoot) , Mailbox ( = Voicemail) , Oldtimer (= Vintage Car) が代表例です。 私がまだ欧州へ渡る前の日本で、ドイツ人の取引先が英語で会議中に"Do you have a Beamer?(プロジェクターはありますか?)" と初めて言われた時、アメリカ人の英語の先生がBMW車をビーマーと呼んでいたので、ドイツ車のことかしら?と誤解した経験があります。 今日は、ここまでです。次回の旅では、欧州でのビジネス通訳で抑えておくべきビジネスマナーの特徴についてお話しを致します。

  

寺田千歳 1972年大阪生まれ。日英独通訳者・翻訳者。ドイツチュービンゲン大学留学(国際政治経済学)、米国Goucher College大(政治学・ドイツ語)卒業後、社内通訳の傍ら通訳スクールで学び、 その後、フランスEDHEC経営大学院にてMBA取得。通訳歴20年内13年ドイツを拠点に欧州11カ国でフリーランス通訳として大手自動車・製薬メーカーのR&D、IRやM&A、 日系総研の政策動向に関する専門家インタビュー等を対応。現在は日本にてフリーランス通訳者。

Copyright(C) ISS, INC. All Rights Reserved.