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プロ通訳者・翻訳者コラム

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峰尾香里先生のコラム 『Winding roadの果てに - ある通訳者のひとりごと』 フリーランス会議通訳者。アイ・エス・エス・インスティテュート東京校英語通訳科講師。
University of Massachusetts Lowell MBA
旅行会社、厚労省の外郭団体での勤務を経て、英語通訳者として稼動開始。金融、IT、製薬の3分野で社内通翻訳者として勤務後、現在は経営戦略、国際会計基準、財務関連を中心に様々な分野で通訳者として活躍中。

第11回:専門分野の勉強方法

台風一過の秋晴れ。紅葉を愛でつつ自然を満喫したいところですが、11月は繁忙期まっただ中、ゆったりとした時間を過ごせるのはもう少し先になりそうです。繁忙期は専門分野の枠を超えて、新しい分野の仕事を経験できる好機でもあります。ただし、チャンスをものにするには、それなりの準備、つまりある程度の基礎知識の習得が必要です。今回は専門分野の勉強方法について少しお話ししたいと思います。

経済はuntouchableな領域?!
以前、通訳学校で「スケジュールにあるように、次回は経済をテーマに勉強します」とアナウンスしたところ、受講生の表情が一斉に曇ってしまいました。曰く、「経済は私にとってuntouchable(触れてはならない)な領域なんです」。さらに詳しく聞いてみると、桁数の大きい数字に拒絶反応がある、金融の記事を見ても内容がさっぱりわからない、などなど。確かに、なじみのない分野は未知の世界、どこから手を付けて良いのかさえ皆目見当がつかないのかもしれません。

形から入るか、意味づけをするか?
通訳エージェントに登録したての頃は、「著名なエコノミストの講演の通訳」といった仕事が舞い込んでくる可能性は極めて小さいのですが、企業訪問通訳(投資家や証券会社のアナリストに同行して、事業会社で行うインタビューを通訳する仕事)を依頼される場合があります。事業会社が属する業界の専門用語に加え、最低限の知識として、財務諸表 (financial statements) の表示項目(line item)を英語/日本語で覚えておく必要があります。しかし、そもそもこの分野に興味が持てないならば、機械的に暗記していく作業はかなり苦痛を伴うプロセスになってしまうかもしれません。もう一つのアプローチとして、財務諸表の情報提供機能に目を向ける、つまり各項目(の数字)の変化が発信する意味合いを読み取っていくと、より親しみやすさが増すかもしれません。

株価にとってプラスのシグナルとは?
自社株買い(stock buyback) は、企業の株価にとってプラスに働くシグナルとなり得ます。自社の株式を市場が過小評価していると企業が考えることが、自社株買いの要因の一つです。また増配(dividend increase : 配当の増加)は、投資家・アナリストが特に注目するポイントですが、将来の業績についてのプラスのシグナルと見られています。結果、通常は株価の上昇を伴います。一方、株式分割(stock splits)の典型的なものは、一株を二株にする株式分割 ( a two-for-one stock split )ですが、所有株式数は2倍になっても所有割合は変わらないままです。また現金取引ではないため、財務諸表への影響もありません。(※1)

専門分野は市場が決めることもある
主な分野の基礎知識を習得し、いざ関心領域や得意分野を通訳エージェントに伝えても、悲しいかな希望分野の仕事の依頼が来るとは限らないのが現実です。特に希望分野がRed Ocean (先行して稼働している通訳者が多い市場) である場合、ひとつの分野に固執せず、Blue Ocean (未開拓の市場)を攻めてみるのも効果的なアプローチかもしれません。未開拓(実績のない)の市場からニーズがあるということは、まだそのニーズに応えられる適任者がいないということです。時流に逆らわず、あえて流れに乗ってみることで新しい道が開けるかもしれません。

それでは次回またお会いしましょう!

※1 Corporate Finance by Ehrhardt, Michael C.; Brigham,Eugene F.. [2010, 4th Edition.] page 587 14.13 Stock Split and Stock Dividends

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