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気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

峰尾香里先生のコラム 『Winding roadの果てに - ある通訳者のひとりごと』 フリーランス会議通訳者。アイ・エス・エス・インスティテュート東京校英語通訳科講師。
University of Massachusetts Lowell MBA
旅行会社、厚労省の外郭団体での勤務を経て、英語通訳者として稼動開始。金融、IT、製薬の3分野で社内通翻訳者として勤務後、現在は経営戦略、国際会計基準、財務関連を中心に様々な分野で通訳者として活躍中。

第21回:「通訳デビューのタイミング」

今年も梅雨明けから一斉に始まったセミの大合唱。心なしかこの夏は例年より控えめだったような気がします。一説によるとセミの幼虫期間はおよそ3年から17年と種によって大きく異なるとのこと。鳴く時間帯もクマゼミは午前中、アブラゼミは午後、ヒグラシは朝夕と大別できるようです。地上に出てからは1週間から1か月程の生命(いのち)ですが、土の中での長い期間を考えると、夏の季節のみで四季を味わえないのは何とも気の毒な気がします。

通訳の勉強をある程度続けていると、仕事を始めるタイミングが気になってくるのではないでしょうか?
※私自身の通訳デビューについては当コラム第3回:「突然めぐってきたチャンス」で書いていますのでよろしかったらこちらもお読みください。当時、通訳学校への入学を決めてから何校かの説明会に参加しました。どの学校でも「デビューまでにはどんな人でも数年に及ぶ相応の勉強期間が必要。」との説明を受けたことを覚えています。

当時と今とではビジネス環境も大きく変わり、仕事を獲得するまでの道筋も多様化しています。ビジネスのスピード化が進み効率優先の現代の環境では通訳者に社内で専門知識を教える余裕はありません。外資企業のバイリンガル社員が所属部署の社内通訳に転身する場合、専門知識が重宝されて通訳訓練を受けずともいきなりデビューが叶うこともあるでしょう。または人材派遣会社に登録後、派遣先企業の一般職からスタートして業界知識を獲得し徐々に通訳業務比率の高い仕事に就くという例もあります。あるいは通訳学校でトレーニングを受けた後、グループ企業の通訳エージェントに登録して、レベルに合った仕事を紹介してもらうケース。その他には旧友や元同僚など知人の紹介で特定の企業と直接契約をして、会議通訳を請け負う場合など、デビューへの道筋は様々です。

ただし早くデビューすることが、果たして確実にスキルアップして息の長い通訳者になることと直結しているのでしょうか?個人的には必ずしもそうとは言い切れない気がしています。

逐次通訳はできるが、ウイスパリングや同時通訳の要望に応えられない。経験した業務に関連した内容はスムーズに訳出できるが、会食で政治や経済の話題になると言葉が出てこないなど、通訳者としての稼働が先行した場合、様々な壁に直面することもあるようです。何かしらの手を打たなければ、伸び悩み自信を失って、せっかく獲得した仕事も自ら手放して、短命な通訳者に終わってしまうかもしれません。

一方で仕事は一切せずに勉強に専念し、複数年にわたる通訳訓練を無事終了し、必要な通訳技術は身につけたとしましょう。いざ派遣会社や通訳エージェントに登録して仕事を獲得しようとしても、通訳経験の不足や通訳需要の高い業界での勤務経験が無いことがネックになってしまうかもしれません。

いずれのケースも通訳力と専門知識のバランスが必要だと感じています。通訳学校で上級クラスに進級したタイミングで仕事もスタートして、専門知識や現場での経験を蓄積して、卒業後に本格的な通訳デビューを目指す。あるいはいきなり現場に出たもののスキルアップの必要性を感じているならば、仕事と並行して通訳学校での訓練を始めても良いかもしれません。目的や問題意識が明確である分、仕事と勉強を両立させるモチベーションも上がって、バランスよく技術と経験を向上させていけるのではないでしょうか。

デビューのタイミングを考えるとき、どの段階でエージェントへ登録したら良いのか?登録テストに合格できるだろうか?といった疑問も出てくるかと思います。次回はそのあたりにも少し触れてみたいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。
それではまた次回10月にお会いしましょう!

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