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峰尾香里先生のコラム 『Winding roadの果てに - ある通訳者のひとりごと』 フリーランス会議通訳者。アイ・エス・エス・インスティテュート東京校英語通訳科講師。
University of Massachusetts Lowell MBA
旅行会社、厚労省の外郭団体での勤務を経て、英語通訳者として稼動開始。金融、IT、製薬の3分野で社内通翻訳者として勤務後、現在は経営戦略、国際会計基準、財務関連を中心に様々な分野で通訳者として活躍中。

最終回:『Winding roadの果てに ~accompanist(伴奏者)として~』

2年間続いたこのコラムもいよいよ最終回となりました。仕事と仕事の合間時間に一気に書き上げることもあれば、1日かけても1行も浮かばないこともありました。今では懐かしい思い出です。つたない文章でしたが、通訳者を目指し日夜奮闘しているみなさんの良き伴奏者となることができたならば、心から嬉しく思います。
前回の終わりにも書きましたが、異なる複数の分野の社内通訳を経験したことがなぜコンプレックスになってしまったのか?現場に出るようになると海外経験とともによく聞かれるのが「専門分野はなんですか?」という質問です。様々な分野での経験があるということは裏を返せば、どの分野の知識も経験もその道のスペシャリストと比べれば未熟である。そう解釈されるのではないかと危惧していました。実際IT、金融の社内経験を積んだあと最後に勤めた製薬メーカーでも、専門知識がないことが不利にはたらくのではないか、通訳者として信頼を得ることができるのかと不安を感じていました。
出勤初日に人事部から社内に一斉送信されたメールには「製薬業界でのご経験はありませんが、ITや金融など様々な業界での豊富な経験がある方です。即戦力になると期待しています。専門用語について質問が出た際は、どうかご協力ください。」と書かれていました。自分でコンプレックスに感じていたことが、実は強みになっていたのだと目から鱗(うろこ)が落ちました。
同じようなことが他にもあるのではないでしょうか。年齢が高いことがむしろ人間関係に柔軟に対応できることで歓迎されたり、流暢な英語ではない方が日本人側にとっては内容を確認できて安心できると採用につながったりと、一見通訳者としては不利な条件が、特定の環境においては有利にはたらくことがあるかもしれません。自分自身の勝手な解釈で可能性を狭めてしまうことは案外多いのではないでしょうか。
もちろん仕事の機会を得たら、日々の研鑽は欠かせません。ですがどうか大きな飛躍のチャンスを自らの手でつぶさないように、果敢に挑戦を続けて欲しいと思います。
このコラムのタイトルを「Winding roadの果てに」としましたが、ここまでの道のりは決してまっすぐではありませんでした。興味の赴くままに寄り道をしたり、無謀とも言える挑戦が飛躍につながったり、チャンスを目の前にして怖気づいたり、リーマンショックなどの外的要因で足踏みをしたり、とまさに紆余曲折の連続でした。
実はこのコラムをスタートした頃から仕事と並行して米大学院で経営学の勉強を始めました。国際色豊かなクラスメートと最後の課目である戦略立案のプロジェクトに取り組んでいます。単なる寄り道に終わるのか飛躍につながるのか今はまだ何も見えません。しかしこのコラムの読者のみなさんこそが、途中で何度も棄権をしそうになった私を励まし背中を押す力強い伴奏者であったのかもしれません。
心よりの感謝を、そしてみなさんの夢が叶うことを願ってやみません。
2年間お読みいただきありがとうございました!

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