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津村建一郎先生

津村建一郎先生のコラム 『Every cloud has a silver lining』 東京理科大学工学部修士課程修了(経営工学修士)後、およそ30年にわたり外資系製薬メーカーにて新薬の臨床開発業務(統計解析を含む)に携わる。2009年にフリーランスとして独立し、医薬翻訳業務や、Medical writing(治験関連、承認申請関連、医学論文、WEB記事等)、翻訳スクール講師、医薬品開発に関するコンサルタント等の実務経験を多数有する。

第13回:betweenとamongの訳し方

今回は、クリスマスイブです。 I wish you a Merry Christmas and A Happy New Year! 

クリスマス定番の英文ですが・・・ムムム、何故“a Merry Christmas”と“A Happy New Year”のように不定冠詞“a”が付くのでしょうか??? この理由はいずれまた説明しましょう。

 

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練習問題:以下の英文を訳してください。

 

問題1:Changes from baseline were compared between three treatment groups.

 

問題2:Changes from baseline were compared among three treatment groups.

 

ヒント:この二つの英文の意味は「ベースラインからの変化度を3つの投与群間で比較した。」ですが、betweenとamongでは比較の仕方が違います。それが解る様に訳してみましょう。

(解答・解説は文末にあります)

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さて、今日の話題は練習問題にある「betweenとamongの訳し方」についてです。次の英文1)と2)の違いが判りますか?

 

1)The negotiations between T, M and N companies continued on through the night.

2)The negotiations among T, M and N companies continued on through the night.

 

参考までに1)と2)の英文を機械翻訳で訳してみますと・・・

1)について

Google翻訳:T社、M社、N社の交渉は夜通し続きました。

bing翻訳:T社、M社、N社の交渉は夜を通して続いた。

Watson翻訳:T社、M社、N社との交渉は、引き続き夜を通じて行われた。

 

2)について

Google翻訳:T社、M社、N社の間の交渉は夜通し続きました。

bing翻訳:T社、M社、N社の交渉は夜を通して続いた。

Watson翻訳:T社、M社、N社の4者協議は、引き続き夜を徹して行われた。← 何故「4者協議」と訳すのかは不明です。(津村 注)

 

ご覧のようにbing翻訳ではbetweenとamongを区別せず、全く同じに訳しています。

一方、betweenとamongに最も反応したのはWatson翻訳です(訳文は間違っていますが)。Google翻訳も多少は反応していますが、本質的には同じ訳文です。

 

私の翻訳講座の受講生の皆さんの訳をみますと、殆どの方がbing翻訳の様にbetweenとamongを区別することなく訳しています。

 

果たして、betweenとamongは区別する必要があるのでしょうか?それとも、ないのでしょうか?

 

1.英文1)と2)の意味するところ

betweenもamongも二つ以上のモノ/コトを比較したり表現する時に使いますが、betweenとamongは本質的に状況が異なります。

 

  • The negotiations between T, M and N companies continued on through the night.

この文のシチュエーションは、下図の様になります。

betweenのイメージ

つまり、会議場にはT社とM社とN社の代表者が集まっていますが、夜通し行われた交渉は、上図の様に1対1の2者会談で入れ替わり立ち替わり行われた・・・と言うことです。

この様に、betweenのイメージは多数が集まっていても、実際の行為は2者間で行われた事を意味しています。

 

一方、

  • The negotiations among T, M and N companies continued on through the night.

こちらの文のシチュエーションは、下図の様になります。

amongのイメージ

つまり、会議場にはT社とM社とN社の代表者が集まっていて、夜通し行われた交渉は、上図の様にテーブルを囲んだ全員参加での3者会談で行われた・・・と言うことです。

この様に、amongのイメージは多数が一同に会して、実際の行為は全者間で行われた事を意味しています。

 

2.betweenとamongの厳密な違い

学校の英語の時間で教わるbetweenとamongの意味はどちらも、前置詞として「~の間で」とか「~のうちで」とかで、厳密な違いには触れません。そして、文法のルールとして「二つのモノについて述べるときは『between』、3つ以上になると『among』になる・・・」という程度ではなかったでしょうか?また、この説明ですと、betweenとamongは文体で使い分けられるだけですので、意味はどちらも「~の間で」と言うことになります。

では本当に「~の間で」のイメージで、betweenとamongが説明できるでしょうか?

 

1betweenのイメージ

まずは、between(in between)のイメージをnativeがどの様に捉えているかを知るために、英英辞典で調べてみましょう。(LONGMAN英英辞典より)

  1. in or through the space that separates two things, people, or places
  2. in the time that separates two times or events
  3. within a range of amounts, numbers, distances etc

⇒ 具体的な二つのモノや人物、出来事、数、距離についての記述、ここで、3のrange=範囲は上限と下限の間の事ですので、具体的な二つの何かの間・・・となります。

例文:

I sat down between Sue and Jane. ⇒ 私はSueとJaneの間に座った。

The team have a lot of work to do between now and Sunday. ⇒ 今から日曜までの間でチームにはやらなければならない仕事が沢山ある。

The project will cost between eight and ten million dollars. ⇒ そのプロジェクトの費用は800万~1千万ドルの間であろう。

 

  1. used to say which two places are joined or connected by something

⇒ 二カ所の場所を何かで繋げる場合に使う。

例文:

They’re building a new road between Manchester and Sheffield. ⇒ マンチェスターとシェフィールドを結ぶ道路を建設中だ。

 

  1. used to say which people or things are involved in something together or are connected

⇒ 人やモノが共に何かに関与している場合に使う。

例文:

the link between serious sunburn and deadly skin cancer ⇒ 重度の日焼けと致死的な皮膚がんの関連性。

 

  1. used to say which people or things get, have, or are involved in something that is shared

⇒ 人やモノが共有している何かを取得したり、所有したり、関与している場合に使う。

例文:

Between the four of them they managed to lift her into the ambulance. ⇒ 4人が協力して、なんとか彼女を救急車に乗せた。

 

これらの意味や例文に共通しているイメージを考えてみますと、betweenは・・・

① 具体的に区別できる二つを取り上げて、その間の関係を述べる。

② 複数の人や物について述べているが、その内の特に二つについて述べている。

③ 通常はbetweenに続いてA and Bと人やモノが続く。

 

以上をまとめますと、betweenのイメージは;

個別に区別できる2つ以上のもの(A and Bなど)の関係を述べる

と言うことができます。

 

2anyのイメージ

次に、amongのイメージをnativeがどの様に捉えているかを知るために、同じく英英辞典で調べてみましょう。(LONGMAN英英辞典より)

 

  1. in or through the middle of a group of people or things

⇒ 人々やモノの集団の中あるいは集団を抜けて。

例文:

The girl quickly disappeared among the crowd. ⇒ 少女は素早く群衆の中に消えた。

I could hear voices coming from somewhere among the bushes. ⇒ 茂みの中のどこからか聞こえてくる声を耳にした。

 

  1. with a particular group of people ⇒ 特定のグループ(集団)の人々と一緒に

例文:

Jim relaxed, knowing he was among friends. ⇒ 友達に囲まれているのを知って、ジムは落ち着いた。

 

  1. used to say that many people in a group have the same feeling or opinion, or that something affects many people in a group

⇒ あるひとつの集団の中の多くの人が同じ感情や意見を持っている、あるいは、あるひとつの集団の中の多くの人に何かが影響を与えている時に使う。

例文:

The problem is causing widespread concern among scientists. ⇒ その問題によって、科学者達の間に懸念が広がっている。

The changes will mean 7,000 job losses among railway workers. ⇒ この変更によって、7000人の鉄道従業員が職を失うことになる。

 

  1. used to talk about a particular person, thing, or group as belonging to a larger group

⇒ より大きな集団に属している特定の個人やモノ、グループなどについて述べる時に使う。

例文:

She was the eldest among them. ⇒ 彼等の中で彼女が最も年上だった。

Innocent civilians were among the casualties. ⇒ 犠牲者の中には無実の一般市民もいた。

 

これらの意味や例文に共通しているイメージを考えてみますと、amongは・・・

① 具体的には区別できない不特定多数の中の何かを指している

② ある団体や集団、あるいは、同じ特性を持つ集まりの中の何かを指している

③ 不特定多数を意味しているので、通常amongの後はひとつの名詞となる(A and Bの形はとらない)。

 

この様に、amongの基本は「個々のものがはっきりしない集合やグループ」について述べる場合に使う事になります。

 

3betweenamongを訳し分ける

学校の英語の授業で、「二つのものについて話している時には『between』を使い、三つ以上のものについて話している時には『among』を使います」と習いませんでしたか?

その解釈が正しいときもありますが、実際にはそうでない場合の方が多い様です。

 

ポイントは 明確に区別できるか出来ないか にあります。

 

例えば次の英文は三つの言語を比較していますが・・・

The differences between Chinese, English and Japanese are huge.

betweenを使っています。これは間違いではなく、正しい英文です。

 

この英文の意味は「中国語と英語と日本語の違いはとても大きい。」となりますが、中国語と英語と日本語と言うように具体的に区別できる言語を並べていますので、betweenを使います。

三つ以上の言語だからといってbetweenをamongとしてしまうと、これは間違った英文となりますので気をつけましょう。

ただし、厳密に言いますと、betweenの基本は「二つの間」ですので、この場合は中国語と英語と日本語の三言語を対比較して、中国語対英語、英語対日本語、日本語対中国語のどの比較でも「違いがとても大きい」と言っている事になります。

一方、次の場合はどうでしょう。

There are many huge different languages among the world.

この英文の意味は「世界には大変異なる言語が沢山ある。」となりますが、many(沢山)と不特定多数を指しているので、この場合はbetweenではなくamongを使います。

以上、amongとbetweenの意味するところの違いを解説しましたが、ご理解いただけたでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

<<<練習問題の解答と解説>>>

 

問題1:Changes from baseline were compared between three treatment groups.

 

標準和訳1⇒ ベースラインからの変化度を3つの投与群間で対比較した。

【解説】

betweenの基本的意味は「二つの間」ですから、3つの投与群をA群、B群、C群とすると、この三投与群を二つずつ(A群対B群、B群対C群、C群対A群)の対比較として、3回比較した事を意味しています。

例えば、臨床試験であれば、3つの投与群をt検定(二群の平均値の比較)を使って、A群対B群、B群対C群、C群対A群と3回検定した・・・と言うことです。

それが解る様にbetweenの場合は「対比較」と訳しました。

 

 

 

問題2:Changes from baseline were compared among three treatment groups.

 

標準和訳2⇒ ベースラインからの変化度を3つの投与群間で一括比較した。

【解説】

amongの基本的意味は「集団の中」ですから、A群、B群、C群をまとめて1回で比較した事を意味しています。

例えば、臨床試験であれば、3つの投与群を分散分析(多群の平均値の比較)を使って、A群、B群、C群をまとめて1回検定した・・・と言うことです。

それが解る様にamongの場合は「一括比較」と訳しました。

 

和訳文で単に「比較した」としてしまうと、英文のbetweenとamongの違いが消えてしまいます。上述の解答・解説のように、betweenとamongの違いをちゃんと訳し分けるのがHigh qualityな翻訳です。

 

 

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