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津村建一郎先生

津村建一郎先生のコラム 『Every cloud has a silver lining』 東京理科大学工学部修士課程修了(経営工学修士)後、およそ30年にわたり外資系製薬メーカーにて新薬の臨床開発業務(統計解析を含む)に携わる。2009年にフリーランスとして独立し、医薬翻訳業務や、Medical writing(治験関連、承認申請関連、医学論文、WEB記事等)、翻訳スクール講師、医薬品開発に関するコンサルタント等の実務経験を多数有する。

第17回:sameとsimilarの違い

新型コロナの感染が猛威を振るっていますが、皆さんのお身体には変わりはありませんでしょうか?

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はインフルエンザ・ウイルスと同じコロナウイルスで、その構造は極めて類似しています。その一方で、新型コロナウイルスによって引きおこされる感染症(COVID-19)の症状や病態は、2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)と同様だと言われています。

今日は、この文章に出てくる「同じ」、「極めて類似」、「同様」などに相当するsameとsimilarの違いについて考えてみたいと思います。

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練習問題:いきなりですが、中学校の数学の問題に答えてください。
以下の二つの台形を比較するとき、どちらが合同でどちらが相似でしょうか?

比較1:台形ABCDと台形EFGHの比較

台形ABCDと台形EFGHの比較

比較2:台形EFGHと台形efghの比較

台形EFGHと台形efghの比較

ヒント:合同は、形や大きさ、対応する辺や角が全て同じ二つの図形の関係を意味します(図形の向きや回転は問いません)。一方、相似は、形や角は二つの図形で同じですが、大きさが異なる関係を意味します(図形の向きや回転は問いません)。

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1.SameとSimilarの違い

では腕試しに、以下の英文の内「彼の主張は私と極めて似ているが、その手段は同じではない。」を正しく表現しているのはどれでしょう。

 

1)His claim is very same to mine, but the means are not similar.

2)His claim is very similar to mine, but the means are not the same.

3)His claim is very same to mine, but the means are not the same.

4)His claim is very similar to mine, but the means are not same.

参考までに1)~4)の英文を機械翻訳で訳してみますと・・・

 

1)について
Google翻訳:彼の主張は私とまったく同じですが、手段は似ていません
bing翻訳:彼の主張は私のもの非常に似ていますが、手段は似ていません

2)について
Google翻訳:彼の主張は私の主張非常によく似ていますが、手段は同じではありません。
bing翻訳:彼の主張は私のもの非常に似ていますが、手段は同じではありません。

3)について
Google翻訳:彼の主張は私とまったく同じですが、手段は同じではありません。
bing翻訳:彼の主張は私のもの非常に同じですが、手段は同じではありません。

4)について
Google翻訳:彼の主張は私の主張非常によく似ていますが、手段は同じではありません。
bing翻訳:彼の主張は私のもの非常に似ていますが、手段は同じではありません。

 

ご覧のようにGoogle翻訳では same=同じ similar=似ている と、機械的(?)に訳し分けています。

一方、bing翻訳では 前者sameを「同じ(3)」と訳したり「似ている(1)」と訳しています。ところが後者のsameは全て「同じ(2~4)」と訳しています。ところがsimilarはいずれも「似ている」と訳しています。

正解は、Google翻訳の様に same=同じ similar=似ている と言う意味になります。

ちなみに、bing翻訳では mine=私のもの で統一されていますが、Google翻訳では sameの時はmine=私、similarの時はmine=私の主張 と訳し分けています。

 

さて、Similarを辞書で調べてみますと・・・

【形】 〔同一ではないが〕類似の、同様の、同類の
【形】 (…と)類似して、似通って、相似の(数学)
【英英】 almost the same = alike ⇔ different

となりまして、イメージ的には「全く同じではなく微妙に違っているが、似通っている、だいたい同じ↓」という意味になりそうです。冒頭の練習問題で例えれば、図形2の相似(形や角は二つの図形で同じですが、大きさが異なる)の関係になります。


(出典:https://pixabay.com/ja/images/search/similar/)

次にSameを辞書で調べてみますと・・・

【形】 〔前述のものと全く〕同じ、同一の
【形】 〔複数のものが極めて〕類似した、ほぼ同一の
【形】 (数量・程度・種類・質などが)(…と)同じ,一致する
【形】 〔同じものが時間を経ても〕不変の、もとのままの
【英英】 used to say two or more people, things, events etc. are exactly like each other(not different);used to say that a particular person or thing does not change (not changing)

英和辞典と英英辞典(LONGMAN)で多少ニュアンスが違うようですが、イメージ的には「(複数のモノが)極めてそっくりで見分けがつかない↓」、あるいは「(過去のモノと)変わっていない、もとのまま」という感じでしょうか。冒頭の練習問題で例えれば、図形1の合同(形や大きさ、対応する辺や角が全て同じ二つの図形)の関係になります。


(出典:https://pixabay.com/ja/images/search/same/)

 

2.SameとSimilarの冠詞の違い

上で示しました様に、sameは合同、similarは相似の関係です。では、次の英文に間違いがあれば指摘してください。

It is the similar program as the one I published last year.・・・(1)

意味は「このプログラムは去年私が公表したものと似ています。」ですが、どこかに間違いがあるでしょうか?

我々日本人は、なにかにつけて冠詞theを使いますが、theは「特定する、限定する」という意味を持っていますので、特別な冠詞・・・と考えた方が良いです。

程度の差こそあれ、「去年私が公表したプログラム」に類似したものは世の中に数多あるでしょう。ですからこの英文の「It」以外にもsimilarなprogramは幾つかあって、その中のひとつとして「It」を取り上げている・・・という状況です。

幾つもある中のひとつですから、similarに付く冠詞は ○=a、×=the となります。従いまして、

Similarに付く冠詞は必ず「a」

と覚えておきましょう。

さらに、「似ている」と言うことは、何か比べる対象があって、それに近い(近づいている)と言うことですから、対象に向かっていくイメージでsimilarに付く前置詞は ○=to、×=as, with となります。

「~と似ている」、「~と同様である」の意味の熟語として

(be) similar to~

と覚えておくと便利でしょう。

以上の事から、英文(1)は

It is a similar program to the one I published last year.・・・(1’)

とするのが正解です。

 

では、今度はsameについて考えてみましょう。次の英文に間違いはあるでしょうか?

It is a same program to the one I published last year.・・・(2)

意味は「このプログラムは去年私が公表したものと同じだ。」ですが、どこかに間違いがあるでしょうか?

今度はsimilar=相似と違って、 same=合同 ですから一語一句違わないプログラムと言うことです。つまり、 It=the one(I published last year) と言うことですから、仮にItが多数あったとしても全てthe oneと一語一句違わないプログラムですので、similarの様に多種類ある中の「あるひとつ」と言うことにはならず、全てthe oneなのです。

従いまして、sameに付く冠詞は ○=the、×=a となります。

Sameに付く冠詞は必ず「the」

そして、「同じ」という場合も何か比べる対象が必要ですが、similar=似ている とは違いまして、比べる対象と同一・・・と言うことになります。つまり、「対象のままで」と言うことですからsameに続く前置詞は「そのまま」「そのとおり」の意味のas(時としてwith)を使います。

「~と同じである」、「~も同然である」の意味の熟語として

(be the) same as~

と覚えておくと便利でしょう。

以上の事から、英文(2)は

It is the same program as the one I published last year.・・・(2’)

とするのが正解です。

 

3.Equal(Identical)とanalogousの違い

Sameやsimilarは、どちらかと言いますと口語調ですので、文章(文語)の場合は、equal(identical)とanalogousなどが使われることがあります。

これらの違いも検討しておきましょう。

Sameは見た目と内容が同じという意味を含んでいますが、

● equal:見た目は同じではないが、内容や量、本質が同じ
例えば、1m=100 cm = 1000 mm や 3×6=18 等のように、見た目は異なっていますが、その内容が完全に一致する場合はequalを使います。

● identical:sameよりもさらに厳格に同じ
例えば、身分証明書(ID:identity card)の写真と本人の関係の様に、服装や髪形は違っていても、目鼻立ちや耳の形状、ほくろの位値などが一致しているような関係の場合はidenticalを使います。

Similarは見た目が似ているが、細かく見ると違っているという意味を含んでいますが、

● analogous=analogue:originalを基に、何らかの変更を加えたもの。見た目は似ていますが、内容や働きが異なります。

 

例えば、糖尿病の治療薬であるインスリンは、ヒト・インスリンを基にその構造を変更した様々なアナログ製剤(analog product)が作られています。この場合のoriginalとanalogueの関係に似ています。

上図で、上半分が基となっているヒト・インスリン製剤の構造ですが、このままですと注射してから血中に拡散するまでに30分以上の時間が掛かります。

そこで、注射してから短時間で血中に拡散する様にアミノ酸配列を人工的に変えたアナログ製剤(図の下半分:グルリジンやリスプロなどは製品名)が発売されています。見た目はよく似ていますが、その働きには大きな違いがあります。

以上をまとめますと・・・

毎日同じ通勤電車に乗っているならsameを使い、通勤時間が先輩と同じ(等しい)というならequalを使い、同僚の社員と似ている服を着ているならsimilarを使い、IDカードの男性が本人とまったく同じというならidenticalを使い、Original製品を改良した新製品を開発しているならanalogousを使う・・・という感じです。

お解りいただけましたでしょうか。

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