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プロ通訳者・翻訳者コラム

気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

西山耕司先生のコラム 『なるようになる!』 日本大学文理学部社会学科卒、メーカーでの営業職を経て、現在は社内翻訳・通訳者として外資系企業に勤務。2009年からは、フリーランスとしても稼働開始。翻訳・通訳者として豊富なキャリアを持つ。ISSインスティテュートのレギュラーコースでは「総合翻訳・本科」「ビジネス英訳・本科」など、上級レベルのクラスを担当し、プロ翻訳者の育成に力を注いでいる。

第6回:新聞を読もう。

日本で刊行されている英字新聞は何紙かありますが、そのいずれにも全く同じ記事が載ることがままあることはご存知でしょうか? 共同、時事、AP、AFP、ロイター等といった内外の通信社発の記事等もそれに含まれます。これらはカバーする内容も多岐に及び、事実だけを淡々と簡潔な英語で伝えるように構成されているので、サイトトランスレーションや音読にも向いています。私の場合は読売新聞系のThe Japan Newsの経済面と国際時事面に縦一列で並ぶこれらの記事を(そのレイアウトから)勝手に「帯記事」と呼んで日々の英語脳の筋トレに利用しています。

経済欄の場合は、企業のM&Aや新製品・サービス、決算の状況、業界団体の景気見通しなどパターンは大体決まっています。国内の企業の話ならバックグラウンドもよく分かっているので内容の理解も楽です。みなさんの英訳にすぐにでも使える表現も簡単に見つかるはずです。売り上げ推移の様々な表現や、「前年度対比」、「一店舗当たり」の定訳等、私がここからから学んだものも多いです。金融の翻訳や通訳を目指す方はもちろん、株式やFX等に投資されている方も情報の収集を兼ねて日々のルーティンとして取り組んでみてはいかがでしょうか?

国際時事面の「帯記事」欄には行ったこともないような国や地域に於いて英語でどう読むのかわからない名前の人物や団体が関わる珍事件や聞いたこともない種類の災害などがたくさん報告されていて、読解力を問われることになります。私はこれ位の負荷がかかった方がよいトレーニングになると思います。毎日続けていくうちにFARCがコロンビアの革命軍のスペイン語名称の略でCARは中央アフリカ共和国のことであるだとか知らないうちに覚えてしまいます(この2国はクーデター騒ぎや紛争が多くニュースになる頻度も特に高いように私は感じています)。背景知識が全くない場合には、不定冠詞や定冠詞にもいつも以上に注意を払って「ああ、これはある情報筋のことだな」、「ここは限定しているから前述の高官のことか」などとストーリーを追っていかないと途中で訳が分からなくなってしまいます。サイトトランスレーション中には戻り読みや日本語の順番に置き換えることを極力避けることで理解のスピードが上がり、結果としてヒアリング力も向上します。やり方は例えばこうです。“”FARC was a guerrilla movement involved in the continuing Colombian armed conflict since 1964. It was known to employ a variety of military tactics in addition to more unconventional ...”「FARCとはゲリラであった、関与したのは、継続中だったコロンビアの武力紛争、(それがまた)いつから続いていたかっていうと1964年。(そんで)それが知られていたのは、取り入れることなんだよね、(なにをかって言うと)様々な軍事戦術を、(何に加えてかって言うと)もっと既製でないような・・・」と()内の「合いの手」を必要に応じて入れることで英語の順番を保持したまま意味を取り込むことが可能です。

最後まで辞書を使わずに読み、知らなかった、或いは意味が思い出せなかった語彙には途中でアンダーラインを引いて最後に調べます。音読はニュースキャスターになったつもりで(各単語の第一アクセントの位置とその母音の発音に特に注意)、最後は“Koji Nishiyama, Bogota”「ボゴタから西山がお伝えしました。」で締めます。

そのほかに、裁判の記事であれば「被告」「原告」「検察」「陪審員」「判事」「上告」「棄却」・・・等の関連語彙で記事に出て来なかったものでもきちんと全て英語で言えるか確認しておきます。軍事、天災等の記事でも同じ要領で語彙の保持を確認します。似たような単語(例えばCrash, Crush, ClashやDrone, Drown, Drawn)等は一つでも出てきたら他の似ているものと合わせて意味と発音の違いを確認します。コンテクストに関係なく単独で出てきたときでもすぐに判別がつくようになるまでこれは続けます。是非お試しください。

私のコラムは今回で終わりとなります。
6ヶ月間読んでいただいた皆さんに心から感謝いたします。
今度はISSIの翻訳クラスか仕事の現場でお会いしましょう。

Non vi dico addio, ma arrivederci! (サヨナラはいいません、では、また!)

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