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塚崎正子先生のコラム 『ある実務翻訳者のつぶやき』 お茶の水女子大学文教育学部外国文学科英文学(当時)卒業。電気メーカーに入社後、フリーランス翻訳者となる。移動体通信、コンピュータ、医療機器を中心とした分野に関する各種マニュアル、学術論文、契約書などの英日/日英翻訳を手がける。

第7回:私に向いているのは翻訳、それとも通訳?

10年近くISSのスクールで翻訳のレッスンを受け持っていますが、サマーやウィンターなどの短期コース、レギュラーの基礎コースの生徒さんから、自分には翻訳と通訳のどちらが向いているかわからないという悩みをしばしば聞きます。

通訳も翻訳も基本的に「ある言語から別な言語への変換」作業であるという点では、変わりはありません。中には、通訳も翻訳も同等に手掛けていらっしゃる方もいますが、大半の通訳者や翻訳者は、どちらか一方だけだと思います。

翻訳者と通訳者

大学時代、英語を専攻していた関係で同級生には通訳者として活躍されている方もいます。同じような教育を受けても、一方は通訳の道へ、他方は翻訳の道へと進んだわけですが、何がそうさせたのでしょうか。あくまで私個人の考えですが、それは本人の持つ性格(基質)が大きく影響していると思います。

通訳者になった人は、私の目からみると、瞬発力に富んでいるように見えます。翻訳一辺倒の私からすると、耳から入ってきた情報を、瞬時に判断し、口から紡ぎだすという作業は、ある種「スポーツ」です。もちろん、そこに至るまで入念に下調べなどの準備をしているはずなのに、それをおくびにも出さずパフォーマンスをする姿には、清々しささえ感じます。

一方、翻訳者はある文章を訳すために、時にはその文章が書かれた背景にまで踏み込んで調べ、一つ一つの訳語に悩み、何とか文字にした後でも、もっと適切な訳語がないか悶々とします。良く言えば「慎重」、悪く言えば「未練がましい」(これはあくまでも、私の事でして、翻訳者みんながこうという訳ではありませんから…)。

このように、通訳は瞬間的に口からアウトプットしなければならないため、通訳者は思い切りのよい人が多く、翻訳は結果が文字として半永久的に残るため、翻訳者は慎重な人が多い気がします。

また、通訳は一般に外に出かけていき、場合によってはチームを組んで仕事をします。一方、翻訳はオンサイトの場合を除き、たいていは自宅で単独で仕事をします。翻訳は孤独作業が平気な人でないと、大変かもしれません。

英語の面から見た違い

次に、英語の運用力の面から見たときの違いについて考えてみましょう。

単語力に関しては、通訳の方が明らかに多くのストックを必要とします。翻訳は通訳と比べ、辞書などで調べる時間的余裕があるため、不足分はある程度補えます。読解力という点では、翻訳の方が厳密なものが求められるでしょう。通訳では耳のほかに、身振り手振りなど目からも情報を入手することができます。しかし翻訳では、文章で書かれていることが全てです。そのため、翻訳者は筆者の意図を文中、場合によっては文字間から読み取らなければなりません。その時に、頼りになるのが読解力です。

ただ、これらは些細な事です。「二言語間の変換作業」であることに違いはありません。ですから、私は生徒さんたちに、「単語が覚えられないから翻訳へ」とか、「読解力が怪しいところがあるから通訳へ」とかいった、決め方をしてほしくありません。

出来不出来に関係なく、翻訳と通訳、どちらの作業をしているときに心地よさを感じますか?自分が心地よいと感じた作業であれば、勉強も進み、結果もそれなりに向上してくると私は信じています。

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