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プロ通訳者・翻訳者コラム

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藏持未紗先生

藏持未紗先生のコラム 『流れに身を任せて』 高校時代に1年間アメリカに留学。国際基督教大学教養学部を卒業。2008年にアイ・エス・エス・インスティテュートに入学。在学中よりメーカー、製薬会社等で社内通訳者として経験を積む。同時通訳科を経て、現在はフリーランス通訳者として稼働中。

第4回:語彙力=基礎体力

日本では4月に新年度を迎える学校や企業が多いので、新たな目標や決意とともに今月を迎えている方も多くいらっしゃることと思います。ぜひ英語や通訳の勉強の目標も新たに立てて、心機一転頑張っていただきたいと思います。

前回、情報を丸々落としてしまうよりは、100%納得のいく表現ではないセカンドベストの訳出であったとしても、最低限意味を伝えることは重要だというお話をしました。もちろん、どうにか訳出することは大切ですが、毎回とにかく何でも出せば良いというわけでもありません。やはり、内容がすんなりと頭に入ってくる、聞いている人にできるだけ負担をかけない通訳を目指したいものです。そのためにも可能な限り、適切な用語や表現を使って、状況に適した分かりやすい訳出をすることが望ましいです。

適語選択や自然な表現ができるようになるためには、まず自分の語彙や表現のストックを増やす必要があります。特にアクティブボキャブラリーと呼ばれる、聞いて意味が分かるだけではなく自分でも実際に使える単語・表現を増やしていかなければなりません。そのためにはインプット・アウトプットの量をとにかく増やすことが大切です。やり方は色々あるかと思いますのでご自身にあったやり方を見つけていただければと思いますが、今回は私が高校の頃、留学へ行く前に行っていた勉強方法をご紹介したいと思います。

私は飽きっぽく自分が楽しいと思えることじゃないとなかなか長続きしない性格のため、自分の好きな映画や海外ドラマを教材として使っていました。何度も見て内容を良く知っている映画を選び、まずは日本語字幕を付けて見て内容を再度確認しました。その後、英語字幕に切り替えて見て、ある程度理解できるようになってきたら、字幕を外して音を聞くことに集中して何度も繰り返し見ました。知らない単語や表現が出てきても、内容はすでに分かっているので、どういう意味か推測することができました。そしてそれを何度も口に出して練習し、英語を話す機会があった時に自分で実際に使ってみるということを繰り返しました。映画はストーリーになっているので、どのような状況や場面でその単語や表現が使われているのかを確認するのも大変参考になりました。

この訓練をしていて気付いたのは、内容が分かっていると、意味から音が聞き取れることもあるということです。音だけを聞き取ろうとしていた時は何の単語か全く分からなかったのに、内容を分かったうえで改めて聞いてみると、さっきまで聞き取れなかった音が突然、意味のある単語として聞こえてきたのです。英語はどうしてもリエゾンや音の強弱のせいで、知っている単語であったとしても違った音に聞こえてしまうことがあります。したがって、音だけではなく、背景知識や文法、文脈や文章構成などあらゆる手がかりを総動員して、意味を考えながら聞くと、聞き取れる音が増えてくるのです。

また、インプットだけではなくアウトプットの量を増やすことも重要です。通訳は声に出して話すのが仕事ですから、練習の段階からしっかりと声に出して口に覚えさせることが大切です。自転車は1回乗れるようになると、その後はいちいち乗り方を考えなくても無意識に乗れますよね。それと同じように、考えなくても反射的に口からスラスラ単語が出てくるようになるまで声に出して練習することが重要です。

さらに単語自体は正確に知っていたとしても、通訳の場合は思い出すのに時間がかかってしまっては意味がありません。また、発音やアクセントの位置が間違っていたら伝わらないこともあります。また、似たような意味の単語でもどちらかというとプラスのイメージの単語とマイナスのイメージの単語があります。単語を覚えるときは単語そのものや意味だけではなく、発音やアクセントの位置、言葉のイメージまで合わせて覚えることを心がけると使える単語の選択肢が増えると思います。

単語を覚えるのは地道な作業で苦手な方も多いかもしれませんが、接頭語や接尾語から覚える、語源から覚える、耳から覚える、文脈から覚えるなど、自分に合ったやり方を見つけていただければと思います。筋トレのように、地味な訓練ですが努力した分だけしっかりと自分の身になるはずです。

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