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プロ通訳者・翻訳者コラム

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豊田実紗先生

豊田実紗先生のコラム 『一歩ずつ、丁寧に』 青山学院大学大学院法学研究科(フランス法専攻)修士課程修了。法律関連の資格を複数取得した後、それらの知識を活かしつつ語学に関する仕事に就きたいと決意し、翻訳学校にて実務翻訳の講座を受講。その後、在宅チェッカーとして業務を開始。現在は、在宅フリーランスの翻訳者として、おもに法律分野・行政分野の文書を中心に、その他、観光・文化芸術分野などの翻訳に携わっている。

第5回:暗中模索のトライアル挑戦

今回は、翻訳会社のトライアル(翻訳者やチェッカーとして翻訳会社に登録される際の採用試験)に挑戦し続ける奮闘の日々についてお話しいたします。

無我夢中で翻訳の勉強をしていた私は、一日でも早く翻訳の仕事をしたいと強く思っていました。そのため、上級コースの日英翻訳の講座を受講していた際、たまたまインターネットで見つけた翻訳会社の求人応募に目が留まりました。それは、外国人向けの観光案内文(京都の観光名所や文化・歴史などに関する文章)の日英翻訳者に関する求人募集でした。今考えてみると「私って、なんて無謀なことをしたのか!?」と思いますが、まだ翻訳勉強中の修行の身ながら翻訳者募集の求人に果敢にも挑戦してみました。早速、その翻訳会社のトライアル文を送っていただきました。

その当時の私なりに一生懸命に辞書やインターネットで単語や表現を丁寧に調べながら英訳して(たしか歴史上のある人物の生い立ちに関する内容だったと記憶しています・・)トライアルに挑戦したところ、後日、その翻訳会社から「残念ながら、翻訳者としては一定レベルに達していない」とのご連絡をいただきました。ところが、そのご連絡には続きがあって「トライアルの結果が惜しいレベルだったので、もしよかったら翻訳作業前の準備作業(たとえば「清水寺」はKiyomizu-dera Temple、「二条城」はNijo Castleなど、原文の日本語文に出てくる固有名詞(人名・神社・仏閣・観光名所など)のあらかじめ決まっている英語表記(定訳)をインターネットで検索して、参照URLとともにその定訳を日本語と英語両方の対訳の形で(「清水寺」Kiyomizu-dera Temple、「二条城」Nijo Castleのように)表に入力していく作業)をやってみませんか?」とお声をかけていただきました。もちろん私は「ぜひ、やらせてください!!」と即答でお返事しました。

このお仕事が、私の翻訳人生のスタートとなったお仕事です。その当時の私としては、このように翻訳会社からご連絡いただいた際、天にも昇る気持ちで本当に嬉しかったことをよく覚えています。今考えてみると、怖いもの知らずで「当たって砕けろ」の精神だった当時の私としては、実力・経験不足で本来ならば応募すら避けるはずの翻訳者トライアルに応募してみたことが結果的に良かったのだな、と思っています。

その翻訳関連作業のお仕事を、半年間やらせていただきました。このお仕事を通じて、固有名詞をパソコンのキーボードで打ち込んで、インターネットで英語表記を検索するという作業のスピードが格段に速くなったため、のちに翻訳やチェックの仕事をする際に用語や表現をインターネットで検索して調べることが苦にならず、とても役立ちました。

半年間はこのお仕事をさせていただいたものの、期間限定のお仕事なので、いつかは終わりを迎えます。だんだんと焦ってきた私は、この仕事をする傍ら、他の翻訳会社の翻訳者募集を探し始めました。

しかし、翻訳者登録するためのトライアルに合格できず、その後まったくトライアルに受からない日々が続きました。やみくもに、あらゆる分野(金融経済・マーケティング・ビジネス全般など)の「翻訳者」の求人募集に応募して「翻訳者」としてのトライアルに挑戦していたために、原文の内容さえも理解できず、翻訳しても簡潔で分かり易い訳文を作成することは到底できなかったのです。

まったく手も足も出なくて困りましたが、ある日、「翻訳者」ではなく「チェッカー」というお仕事の求人募集を目にしました。チェッカーとは、原文と訳文(自分以外の翻訳者が訳した訳文)を照らし合わせたうえ、数字ミス(たとえば「2年」と記載すべきものの、訳文には「3年」と記載されていた場合など)や単位ミス(たとえば「5 kg」と記載すべきものの、訳文には「5 g」と記載されていた場合など)、スペルミス(たとえば「カメラ(正しくはcamera)」のスペルがcameroになっていた場合など)などの不備があった場合、正しい訳に直す作業をする者をいいます。「翻訳そのものの仕事でなかったら、もしかしたら私でもトライアルに合格できるかも」と思った私は、早速、とある翻訳会社のチェッカー募集に応募・トライアルを受けてみました(たしか株式会社の業績に関する短いプレスリリース文をチェック作業するトライアル内容だったはずです・・)。当時、私はチェック作業のやり方をまったく知らなかったので、とりあえずパッとすぐに見つけられるような単純ミス(数字・単位ミスなど)を修正したうえでトライアル課題を提出しました。その結果、おかげさまで運良く合格できました。

次回のコラムでは、めでたくチェッカー登録のトライアルに合格できた私があまりの嬉しさにその翻訳会社に突撃訪問したエピソードも踏まえて、チェッカーのお仕事についてお話しいたします。

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