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プロ通訳者・翻訳者コラム

気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

豊田実紗先生

豊田実紗先生のコラム 『一歩ずつ、丁寧に』 青山学院大学大学院法学研究科(フランス法専攻)修士課程修了。法律関連の資格を複数取得した後、それらの知識を活かしつつ語学に関する仕事に就きたいと決意し、翻訳学校にて実務翻訳の講座を受講。その後、在宅チェッカーとして業務を開始。現在は、在宅フリーランスの翻訳者として、おもに法律分野・行政分野の文書を中心に、その他、観光・文化芸術分野などの翻訳に携わっている。

第6回:突撃会社訪問

今回のコラムでは、翻訳会社のトライアルに合格した後の、チェッカーとしての日々についてお話しいたします。

前回のコラムでお話ししたとおり、チェッカーとして翻訳会社のトライアルに合格できた私は、あまりの嬉しさのため「チェッカーとして登録させていただいたことについて直接御礼を申し上げたいので、オフィスに訪問してもいいですか?」と、その翻訳会社のチェッカー採用の担当者さんに、メールでお聞きしてみました。本来、在宅チェッカーとして登録された場合、基本的にはチェックの仕事を自宅でおこなうとはいえ、社員の方々に直接お会いしてみたいと思ったのです。今考えてみたら、なんて無謀でご迷惑なことを言ってしまったのかしら・・と冷や汗が出てしまいますが、そちらの担当者さんが意外にも快諾してくださったのです。

早速、お言葉に甘えて訪問してみました。ありがたいことに、10数人ほどの全社員さんがお一人ずつご挨拶してくださいました。今まで一度もチェックの仕事をしたことがない私でしたが、どうしてもチェッカーの仕事をしてみたかったので「法律分野でしたら比較的自信があります」のように、図々しくも思いっきりアピールしてしまいました。今思い返してみても、お恥ずかしいかぎりです。ところが、そちらのコーディネーターさんは私の恐ろしい熱意を感じてくださったのか、「ならば後日、法律文書の英日チェックのお仕事をご依頼しますね。まずは試しに少量の案件にしましょう」と、涙が出るほど温かいお言葉をおっしゃってくださったのです。

今振り返ってみると、図々しくも思い切って翻訳会社に突撃訪問したことが、本当に良かったと思います。チェッカーの仕事が未経験な私でしたが、それでも当時の私ができそうなことを翻訳会社の担当者さんにお伝えできたことが、結果的にお仕事のご依頼に繋がったのだろうと思います。

おかげさまで、その翻訳会社から後日すぐに法律文書の英日チェックをご依頼いただいて、チェックの仕事を初めてやらせていただきました。2ページ程度の少量のチェック案件で(たしか建築許可に関する申立書の英日チェックだったと思います)、納期に関しても時間的な余裕があったので(半日間ほど)、今考えると簡単なチェック案件といえます。しかし、当時の私としてはチェック前の訳文を読んでみてもすべてが正しく思えて、何をどのように修正したらよいのか分からず、困惑してしまいました。じっくり時間をかけて検討しすぎた私は、わざわざチェック修正する必要のない、微妙な言い回し(たとえば「over the next few years」という原文について「今後数年のうちに」といった決して誤訳ではない元々の訳に対して、わざわざ「今後数年間で」のように修正してしまうなど)にまで手を加えてしまいました。そのチェック案件をし終えて提出したのち、後日改めて、その担当のコーディネーターさんから「まずは基礎的な事項(たとえば「5 km」を「15 m」と記載しているなど、単位や数字などの明らかな誤記など)のみ、確実に修正することがチェッカーの役割ですよ」とのご指摘を受けました。あくまでも「翻訳者が訳したチェック前の訳文を最大限に生かすこと」が重要であって、「必要不可欠なチェック事項(上記の単位や数字ミスなど)を的確に見つけ出して修正を施すこと」がチェッカーの使命であることを、初めて知りました。つまり「誤訳とまではいえないような訳文については、あえて修正する必要はない」(たとえば「〇〇株式会社は、本契約を締結しました。」という原文について、「〇〇 Co., Ltd. has concluded this Agreement.」といった決して誤訳ではない元々の訳に対して、わざわざhasを削除して「〇〇 Co., Ltd. concluded this Agreement.」と修正するなど)ということに、やっと気づくことができました。

その後もチェック作業のご依頼をいただく度に、私が実際にチェックした箇所を確認していただいて、担当のコーディネーターさんなどから適切なアドバイスを頂戴しました。たとえば、原文と訳文を照らし合わせて慎重にチェック作業をしているつもりでも、今、自分自身が確認して照らし合わせている原文や訳文の箇所を見失ってしまうことが多々ありました。その際、翻訳会社の方々から「パソコン画面上で原文と訳文とを照らし合わせるのではなく、原文と訳文の両方をいったんプリンターで印刷してみて、プリントアウトした紙媒体の状態で原文と訳文を照らし合わせて読んでみると、チェック作業がしやすい」と教えていただきました。たしかにパソコン上で文章を読むよりも紙面上で読んでみたほうが誤りに気づき易く、おかげで適切なチェック作業ができました。

次回のコラムでは、その他の翻訳会社のチェックの仕事をしながら、いよいよ翻訳者としての登録のトライアルに挑戦しつつも、苦戦しまくり・・・についてお話しいたします。

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