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プロ通訳者・翻訳者コラム

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豊田実紗先生

豊田実紗先生のコラム 『一歩ずつ、丁寧に』 青山学院大学大学院法学研究科(フランス法専攻)修士課程修了。法律関連の資格を複数取得した後、それらの知識を活かしつつ語学に関する仕事に就きたいと決意し、翻訳学校にて実務翻訳の講座を受講。その後、在宅チェッカーとして業務を開始。現在は、在宅フリーランスの翻訳者として、おもに法律分野・行政分野の文書を中心に、その他、観光・文化芸術分野などの翻訳に携わっている。

第8回:翻訳あれこれ

今回のコラムでは、在宅フリーランスの翻訳者として、翻訳会社からのお仕事をした経験談についてお話しいたします。

当初は少量の案件だったものの、法律文書の日英・英日翻訳をご依頼いただきました。翌日提出などの短納期が多かったので、訳抜けしてしまったり(たとえば、原文「注文確定後の取消は、できません。」の場合、「Cancellation is not acceptable.」と訳してしまって、「注文確定後の(after confirmation)」の部分を訳し忘れてしまうなど)、当事者を取り違えたり(たとえば「XYZ shall give notice to ABC.」という原文の場合、「(一方当事者の)ABCは、(他方当事者の)XYZに対して通知するものとする。」のように当事者の名称を逆にして訳してしまうなど)、慌てて読み違えたり(原文「観光庁」について、正しくは「Japan Tourism Agency」と英訳すべきものの、原文の記載が「官公庁」であると思い込んで「public agencies」と英訳するなど)、数多くのうっかりミスをしました。翻訳会社に提出する直前に私自身が気づいた場合もありましたが、お恥ずかしいことに翻訳会社の担当者さんから後日にフィードバックされてご指摘を受けたこともありました。やはり慌てすぎることも良くない、と改めて感じました。

また別の案件の際、学術論文に関する英日翻訳で、本文の記載下の欄外に、注釈として参考文献(References)に関する記述(「作者名、文献の題名、発行年月日、出版社名」など)が数多く列挙されていたので懸命になって和訳したものの、訳文の提出後に「こちらの参考文献の記述は、すべて原文の英語表記のままで結構ですよ。和訳は必要なかったのですが・・・。きちんとあらかじめご依頼の際に説明したはずですよ」と、翻訳会社の担当者さんからご指摘を受けたので確認したところ、たしかにそのような指示を受けていた、といった失態を演じてしまいました。

やはりこの際も、納期に追われて慌ててしまい、翻訳会社や依頼主からのご要望をうっかり無視してしまったのが敗因でした。翻訳会社からの指示はきちんと集中して聞かなくちゃ、と改めて反省した次第です。

また、以前のコラムでお話ししたとおり、京都の観光名所や文化に関する日英翻訳の準備作業の実績があったからなのか、意外にも日本の観光分野や文化・芸術分野に関する日英翻訳のお仕事も数多く頂戴しました。その際、日本の地名や名称などの固有名詞の読み方・記載を間違えてしまい(たとえば「利根川(Tone-gawa River)」を「Kine-gawa River」のように間違えて英訳するなど)、翻訳の納品後にご指摘を受けて背筋がゾーっと凍りついたこともあります。やはりその都度、固有名詞は丁寧に調べて確認することが必要だな、と実感しました。たとえ「自分は分かっている」と思っていても、思い込みもありうるので(たとえば茨城県の茨城についてIbarakiではなくIbaragiと記載してしまうなど)こうした固有名詞に限らず、すべての事項について、翻訳する際は読み方や意味などを確認することが必要だな、と改めて自覚しました。

また翻訳する前には、すぐに訳出の作業をしないで原文の内容をあらかじめ調べるという準備作業が大事だな、と再認識しました(たとえば、所得税に関する納税証明書を英訳する場合、翻訳作業をする前に、所得税のしくみについて調べておくなど)。どうしても納期に追われてしまうと、すぐに訳文を作成したい気分になりますが、慌ててしまうと誤って訳してしまう可能性があるので焦りは禁物です。

同時に、訳文の作成後には、改めて自分自身が作成した訳文を熟読することも大切といえます。たしかに原文と訳文を照らし合わせながら誤りの無いことを確認することも大事ですが、訳文そのものを通読することによって予想外の不備を見つけ出すこともできるので(たとえば、一文すべてをすっかり訳し忘れてしまっているなど)、いったん自分自身の訳文のみを熟読してみることも必要な作業といえます。

そして、一生懸命に調べても「どのように訳してみたらよいか、どうしても分からない」ということが、実際に翻訳作業をすると頻繁にあります。その際、きちんとコメント欄などにその旨を記載したうえで納品することが重要なことを、翻訳作業を通じて学びました。たとえば「〇△株式会社」の正式な英語表記を調べたものの、どうしても見つけられずに分からない場合、いちおう暫定訳(たとえば「〇△Co., Ltd.」のように)を訳文に記載したうえで、コメント欄を付けて「正式な英語表記が分からなかったので、こちらは暫定訳です」と明記したうえで納品するほうが、その後に翻訳会社の担当者さんやお客様が訳文を読んだ際に「そうか、この表記は暫定訳なんだ。ならばもう一度、この英語表記を再確認してみよう」と迅速に対応していただき易いからです。

次回のコラムでは、翻訳学校で講師デビュ―というご縁がきっかけで、改めて翻訳の猛特訓に明け暮れる日々についてお話しいたします。

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