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プロ通訳者・翻訳者コラム

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相田倫千先生のコラム 『英語をキャリアとして一生続けていく』 大学卒業後、米ニューヨーク州立大学、オレゴン州立大学でジャーナリズムを学び、帰国後、ISSインスティテュートに入学。現在はフリーランスの通訳者・翻訳者として、主に半導体、産業分野のエキスパートとして活躍中。

第9回:プロになってからの勉強法

皆さまこんにちは。
毎日うだるように暑いですね。今日の東京近辺の気温は35度らしいです。我が家のキッチン温度計も朝からすでに34度を示していました。外はどんなに暑いのであろうと、考えただけでも外出する気はおこりませんね。
皆さまは、夏休み、楽しく過ごされましたか?このお盆休みが終わると、一気に年末まで行ってしまいそうですね。秋は、通訳は繁忙期なので、体調を崩さないよう、スケジュールの管理もしっかりとしないといけないと自分に言い聞かせています。

今月のコラムでは、プロになって独立してからの勉強法についてお話ししましょう。
「プロになってから」とは、専門分野がある程度決まり、仕事の量もある程度確保され、決まったクライアントからもリピートの依頼が来るようになる、そういった状況のことを言います。

専門分野の数と深さについては、通訳者さんによって個人差はあると思いますが、大きくは深くかかわる分野を2つ以上持っているのではないかと思います。私の場合ですと、半導体が出発点で、そこから電気電機、光学、幾何光学、ソフトウエアなどと、半導体という一つの分野から関連した分野まで広がりました。半導体だけを知って仕事をするということは不可能です。その半導体をどう製品にするかということが大切なのですから。つまり、それを使ったチップ、メモリ、そして製造工程など、たくさんの要素を理解しないと通訳はできないのです。コアの勉強法としては、お恥ずかしながら、高校の頃に使った「チャート式シリーズ物理II」を購入し読みかえしました。数式や公式には時間をかけずストーリーを追うことと、専門用語を取ることに集中しました。まずは日本語を拾ってそれに対しての英語を調べました
次に、半導体分野の弁理士試験の受験参考書を読みました。そこでは大学院レベルの用語が出てくるので、内容の理解はできなくとも、関数名、法則名などを覚えました。そしてあらゆる「チップ製造と不具合について」書かれた英語の原書と日本語の本。
それらから拾った内容は、全てルーズリーフの用紙にまとめてファイルを作成します。私はアナログ人間なので、パソコンのファイルにソフトデータとして入れ込むよりは、さっと手に取り読めるノートの方が良いので、書斎の本棚に「専門用語集」として、ファイルを保管し、ことあるごとに書き足して行きました。それらが基になり、込み入った電機関係の会議や半導体の工程技術会議の同時通訳が出来るようになりました。

それでは、自分の「真の専門」ではない部分はどうでしょうか?とはいえ、私の通訳分野は技術をベースにしたポートフォリオなので、金融や医学歯学は別として、ITや自動車や食品なども依頼が来るため、結局はそれも専門として含まれています。
その場合は、とにかく頂いた資料を全部くまなく読んで、インターネットで関連情報を得る、そしてそのことについて、さらに深く調べる。時には通訳する予定のスピーカーの方の書いた論文まで読むこともあります。また、通信やITの仕事でしたら、深く掘り下げた結果、通信プロトコールまで行きつくこともあります。

先日の仕事は、あるスピーカーの方は原稿が出ないということだったので、その方の書いた論文をインターネットで探して読んで英訳し、専門用語を調べつくし、通訳に入りました。ところが…その方、「今日は皆さまのご協力のおかげで、このような素晴らしい会を無事終えることができ…ご苦労様でした」という簡単なスピーチでした。やれやれ…拍子抜けしたのですが、納得がいくまで調べることが大切です。特にスピーチは、何が出るかわかりません。もしかしてその方は、本当にご自分がなさった研究の話を掘り下げていたかも知れないからです。それを「訳せません」はあり得ないからです。

またプレゼン資料などが出た時には、もちろん目を通しますが、それだけではなく、私は訳を資料の中に書き込みます(資料に書き込みが可能かどうかはエージェントに必ず確認してください。不可の場合もあります)。そして、その中で出てきた「クライアント専門用語」については、エクセルで抽出し、ファイルを作り、会場へ持参します。時間的な余裕があれば、パートナーの通訳者とすり合わせをすることもあります。そこまでやっても緊張したりすると焦ることもありますから、より良いパフォーマンスを確保するには準備し過ぎるということはないのです。

その後、会社業務に取り組む中で、企業間の合弁、買収、内部統制やコンプライアンス、会計のIFRSなどの分野が広がりました。その都度、数か月時間をかけて専門分野を増やして行きました。今は理系と文系の専門分野のバランスがとれており、脳にも刺激があるのではないかと思っています。今後は、技術を自分の専門として維持しつつも、企業の内部統制や会計監査分野にも重点を置きたいと思います。
通訳分野も世の中の流れとともに進化する必要があると思います。

以上のことは、私だけではなく、プロの通訳は皆さん実行されていることだと思います。自宅にいる時は、次の仕事の準備と勉強など、やることはたくさんあります。家事もしなくてはなりません。もちろん私以上に調べてくる通訳の方もいらっしゃいます。いつもパートナーを組ませていただく方には、色々と勉強させていただいています。
「資料をいただけるなら、なんでもこなします」が基本的な姿勢ではないかなと思います。

ですから、たまの休みにはリラックスして旅行したり、家族でくつろいだり、勉強ではないケーブルテレビのアメリカドラマをただ純粋に楽しむことが必要なのです。

分野の選別も、これはご縁というものでしょうか?
15年ほどG県で過ごした結果、製造業やIT、そして自動車関連企業などが分野になってしまいました。この期間を都内で住んでいればきっと金融や医療という分野になっていたと思います。
与えられた仕事をこなし、進んでいくということでしょうか?

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