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相田倫千先生のコラム 『英語をキャリアとして一生続けていく』 大学卒業後、米ニューヨーク州立大学、オレゴン州立大学でジャーナリズムを学び、帰国後、ISSインスティテュートに入学。現在はフリーランスの通訳者・翻訳者として、主に半導体、産業分野のエキスパートとして活躍中。

第11回:通訳コースの講師として、通訳者を目指す後輩の皆さんへ

皆様こんにちは。
早いもので、このコラムも12月で終わりです。つい最近始めたような気がしているのですが、一年が経つのは本当に早いですね。これまでは、私の通訳者としての勉強法、経験、そして母親と通訳業を両立するためにどうしてきたかについてお話ししてきました。
私は今、アイ・エス・エス・インスティテュート東京校で通訳コースの講師もしています。自分が通訳をするのも好きなのですが、生徒さん達に教えることにも生きがいを感じます。というのも、生徒さん達はかつての私だからです。悩みながらもがんばって通学している姿を見ると、自分を思い出します。そして、やはりお手伝いしたいと思うのです。

講師として生徒さんと接し、いろいろな話をしていく中で、生徒さんが抱えている悩みや迷いにはある共通点があることに気づきました。それは、「英語力が伸びない」「リテンションがない」「日英がきちんと訳せない」などです。皆さんもこのうちのどれかに当てはまるのではないでしょうか?

まず、「英語力が伸びない」という漠然とした悩みですが、これが一番根深い問題です。原因は、基本的な文法力が不足している、英単語を曖昧にしか覚えていない、英文をきちんと理解して読んでいない、ということがほとんどの場合あてはまると思います。特に、文法を完全に理解していないと日英訳はできません。持っている英語力が10だとすると、英日では6割、日英だと2割程度しか力を出せないのです。この数字を限りなく10に近づけるのがプロですが、生徒さんのレベルではまだまだ使える英語が少ないので苦労するのです。英単語を覚えるときに、動詞であれば他動詞か自動詞かを明確にする、そして必ず例文をつけて覚えるということが必要です。

「リテンションがない」のは、背景知識やボキャブラリーの不足により、内容が理解できていないことが原因です。解決法は、英語または日本語を文脈としてとらえることです。常に英字新聞を読む習慣をつけましょう。そして読んだ文章をまず日本語に訳して、次にそれをまた英語に訳すという練習をすると、リテンションを伸ばすことができます。

「日英がきちんと訳せない」という悩みも、文法力の不足と、読み聴きする英語の量が絶対的に足りないことが原因だと思います。英語を読んだり聴いたりしている時でも、これは素晴らしい英文だと思ったら、自分のノートに書き写して覚えることを繰り返すのです。そうしないと、仕事で使えるような分かりやすくてネイティブが聞いてもおかしくない英語は身に付きません。

これらを一言でいうと、英語への「Exposure」が少ないことが原因と言えます。
毎晩寝る前に英単語をチェックしていますか?勉強時代にはとても大切なことです。わからない英文をそのままにして次へ進んでいませんか?こういった基本を大切にしてくださいね。

かつて私が担当したクラスに二人の生徒さんがいました。
Aさんは翻訳者希望、Bさんは通訳者希望でしたが、私が感じたのはその反対で、Aさんは通訳者に、Bさんは翻訳者に向いていると思っていました。二人の相談にのっているうちに、それぞれの向いている方向について、私が感じた理由とともにお話ししました。Aさんは理解が早く言葉の瞬発力があり、Bさんはバックグラウンドが理系ということもあり、論理的な思考と言葉をじっくりと考える癖がありました。もちろんそれでも努力次第で、基本の英語力があれば自分の希望する方向へ行くことができます。
その後、数年たって二人に再会しました。Aさんは翻訳を続けながらも通訳へシフトし、宇宙関係を専門としているとのこと、そしてBさんは私が何気なく言った「特許翻訳がいいですよ」をきっかけにして、見事に特許翻訳をマスターしているとのことでした。二人とも今は小さなお子さんをかかえながらもばりばり活躍しています。

ある生徒さんは、私の担当するクラスから一年間進級できずにいたのですが、今回は進級することができました。でも実は中間テストの時には進級候補として挙がっていませんでした。期末テストの前頃からめきめきと力を伸ばしてきて、授業中にどんな長文をあててもなんとか英訳をこなして通訳できるようになり、期末テストでは担当講師二人のお墨付きで進級しました。彼女に秘訣を聞いたところ、「とにかく文章を終わらせること、途中で尻切れとんぼにしないことを目標にしました」ということでした。そうなのです、このように一つ一つを緻密に仕上げることが、結局は一番の上達法です。

私も未だに通訳の仕事を終えて帰宅すると、その日の通訳ノートを整理して言葉をひろい、バインダにまとめて次の日持っていきます。このようなことの積み重ねで一人前の仕事ができるのです。アイ・エス・エス・インスティテュートを卒業したら終わりではありません。日々の仕事の中でも勉強は続きます

通訳を勉強中の皆さん、どんなに素晴らしいプロの同時通訳者でも、かつては皆さんと同じだったのです。諦めずにこつこつとやってきた結果が今の姿なのです。
私も通学していた頃には、授業が終わってからクラスメートと慰めあったりしていましたよ。コーヒーとサンドイッチを食べながら。いつか同時通訳者になれるのかしら?と不安でしたが、楽しく励ましあっていました。

悩むならいっそのことすべてやりましょう。
じっとしていてもなにも進みませんよ。
私もこの原稿を書き終えたら、次の仕事の準備を始めます。
では、また来月!!

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