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相田倫千先生のコラム 『英語をキャリアとして一生続けていく』 大学卒業後、米ニューヨーク州立大学、オレゴン州立大学でジャーナリズムを学び、帰国後、ISSインスティテュートに入学。現在はフリーランスの通訳者・翻訳者として、主に半導体、産業分野のエキスパートとして活躍中。

第12回(最終回):継続は力なり~通訳者を目指す皆さんへのエール~

皆様こんにちは。早いもので、私のこのコラムも今回で最後となりました。ついこの間コラム執筆の依頼をいただいたと思っていたらもう一年が過ぎようとしています。一年前、最初のコラムを書いたの頃の自分と今の自分を見てみると、相変わらず忙しい毎日です。繁忙期なので、昼間は通訳、夜と週末は翻訳または資料を読んで勉強をしています。今日は皆さんへエールを送るためコラムを書いています。

英語力が伸び悩んだり、なかなか通訳としての実力が伸びなかったり、仕事が来なかったり、いろいろありますよね。私もそうでした。自分が出来ないのではないか?このまま通訳の勉強を続けて行ってよいものか?と悩んだ時期もあります。そんなときは自分に、いったいなぜ通訳の勉強をしているのか?始めた理由はなにかと問います。答えはいつも同じ。「好きだから、これ以外仕事でやって行きたいものがないから」でした。そして今、あきらめずにやって来てよかったと思っています。理由は二つあります。

一つは、いつも社会の先端に触れることができ、また通訳を通して世の中の動きを体感できるからです。技術分野で通訳が入る部分は、一番新しいまだ汎用化されていないテクノロジーの紹介や打ち合わせです。ビジネスではまだ社員の方も知らないような事業再編や買収に携わるときもあり、会社の成り立ちや経営者の厳しさを肌で感じることが出来ます。それらを通じて、世の中の厳しさや日本の立ち位置を確認できるのです。社会の仕組みを理解できるという側面もあります。また今後日本の社会はどうなっていくのかということを垣間見ることが出来ます

二つ目は、経済的なことです。今後の日本は右肩上がりが期待できません。バブル時代、そしてその崩壊と社会の流動化を経験したのは、ほかならぬアラフィフの私の世代だと思うのです。私が女子大生だったころ、今の日本の経済的状況は全く想像すらできませんでした。そのまま繁栄が続き、仕事を辞めても子育てが終わって仕事がしたくなったらなんとなく就職できるだろうと思っていましたし、事実そういった世の中でした。私自身、航空会社を退職したのですが、そのまますぐに一部上場の指定銘柄の会社の正社員に決まりました。今では考えられないことだと思いますが、当時はそういうことが可能でした。というのも今は死語となった「OL」という、一般・営業事務で正社員という職種があった時代でした。結婚して寿退職して、そして主婦をして優雅に過ごし…という人生設計を立てることが出来た最後の世代でしょう。
その時代に、職業を持つために寿退社以外で退社してアメリカへ留学し、帰国後は主婦でありながら毎日5時に起きて朝早く出勤、夜はそのまま通訳学校へ行き、通訳を続けてきた私は変わり者でした。まわりの人たちにとっては聞いたことのない職種と生活。そこまでやってどうするの?とは、よく聞かれたものです。なぜそんなに厳しい生活をするのかと…。
ところが、その後の日本は転がり落ちるように不景気へ突入し、私たちは社会の変遷を経験しました。その状況で、この年齢でも忙しくお仕事をいただけるのは、やはり他人の目がどうであろうと仕事そして通訳を「続けてきたから」だと思います。今は忙しい時期とそう忙しくない時期があってバランスが取れているのと、子供の手が離れた時期に社会とかかわり生きがいがあるということに、とても感謝をしています。そして、社会がどう変わろうが、スキルと経験があると、やはり仕事はあるものなのだなと思っています。通訳は長く出来る仕事なので、私もやはり出来る限りは続けたいと思います。
昔自分が着手した分野や難しいけどがんばってマスターした分野が、今の私を助けています。特許関係の通訳もしていますが、最初は「新規性」も「拒絶」も全く知らず、素人から出発しました。疑問を持ちつつも勉強を続け、10年たったらいつの間にか「その道の通訳」ということになっていました。弁理士の方々を前に講演会の通訳をするなど、昔は思いもしませんでした。

そして私には、通訳者の他に、通訳学校の講師という側面があります。
先日も授業でしたが、生徒さんの一生懸命でひたむきな姿に素晴らしさと敬意を感じますし、講師として癒されます。生徒さんと通訳訓練をして、訳を教え、会話をする。これが日々難しい仕事をしている合間の癒しなのです。皆さんはかつての私、そしてこれからの社会を担っていく同志です。しっかりと力を身に着け、通訳になる・ならないは関係なく、羽ばたいて行ってもらいたいものです。

日本の通訳者のレベルは、外国の通訳者と比べても高いと思います。通訳業界が確立されてから少なくとも30年近くたちます。その間には、ISSをはじめとした学校を出て活躍している通訳者たちがレベルを引き上げ、その結果、日本人通訳者が一番有能なのではないかという賛辞をいただくことも多々あります。
反対に、その中にこれから参画しようとする新人通訳者にとっては、厳しいものがあると思います。でも、経験を積んでスキルを高めてください。
一般の人の英語力が高まれば高まるほど、高度なそして難しい部分だけを私たちプロの通訳者が担うようになります。その中で自分はどこに身を置けばよいのだろうと、今から考えてください。

とにかく「継続は力なり」を信じてやって行きましょう。私もまだがんばりたいと思います。そして、ご縁のあった分野やお仕事を大事に広げていってください。

1年間、お読みいただきありがとうございます。
書くことが癒しになっていましたし、整理もできました。

それでは!
また!!

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