Tips/コラム
USEFUL INFO
プロ通訳者・翻訳者コラム
気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。
山口朋子先生のコラム 『"翻訳"は一日にしてならず --- 一翻訳者となって思うこと』 慶應義塾大学法学部法律学科卒業。外資系メーカー勤務を経た後、フレグランス業界へと活動の場を移し、マーケティング他業務に携わる。その後、米国カリフォルニア州立大学大学院にてTESOL(英語教育法) 修士号を取得。日本帰国後、アイ・エス・エス・インスティテュート英語翻訳者養成コースを経て実務翻訳の道へ。現在は、医療・美容業界関連、その他雑誌・ホームページ記事やエッセイなどの分野から、会社規約・契約、研修マニュアル、取扱説明書、財務レポート他各種報告書などのビジネス文書等に至るまで様々な分野の翻訳を手掛けながら、同校の総合翻訳基礎科の講師を務めている。
第6回:日々のちょっとした積み重ね ─ 学習法のヒント
日頃から苦手だと感じていること、もっと伸ばしたいと思っている技術や能力などは、人によってさまざまだと思いますが、ご自分の力を見つめ直し、必要に応じた学習法を取り入れることで、少しずつ前進を重ねて行くことができると思います。
例えば外出先。どこにいても日本語や英語があふれていますよね。私は電車に乗っている時には必ずと言っていい程、本を読んでいたり、翻訳案件を抱えている場合にはその原稿や関連資料に少しでも目を通す時間に充てたりして、移動時間を出来るだけ有効に活用し、常に言葉に触れていることが多いです。そんな中ふと吊り広告を目にすると…女性誌、男性誌、情報誌等々の広告、お店の宣伝などのさまざまな文面が目に飛び込んで来ます。学校で学んでいた頃は特に「あ、このキャッチフレーズ面白いな、英語でカッコ良く言うとしたらどんな言い方がいいかな?」などと、あれこれ考えていることが多く、また英語・日本語にかかわらず分からない語や思い付いた事があるとすぐに調べないと気が済まないため(笑)電子辞書は常に持参していました(ほとんどその為だけにしか電子辞書は利用せず自宅では必ず辞書を引くようにしていましたが)。そして、電車の吊り広告にしても、その他読んでいる本や雑誌の中のフレーズや文にしても、前後の文脈に関連が無い独立したキャッチフレーズ的なものと、ある程度関連性がある文のまとまりと、それぞれを自分でピックアップし、背景を設定して訳をあててみたりして、もっと詰めたい所や気になる点が出て来た場合は帰宅してから再チェックやリサーチを行って自分なりにノートにまとめていました。こうすることで、思考回路が広がり、そこから表現の幅も広がった気がします。
また、例えば一つの文(英語でも日本語でもよく、その長短もさまざまですが、まずは短文からでも)につき、その内容を、長くなっても良いのでとにかく細部にこだわって正しく、詳しく、それぞれ日本語や英語にする作業。そして反対に余計なものをそぎ落とし、それでも最低限必要な要素は揃っているため忠実に原文を再現できている最もシンプルな表現を完成する(いずれも勿論、文法・意味・言い回し的に正しい事が前提。正確なチェック力が不可欠なのであわせて磨く必要あり)といった練習も、文脈に合わせた要素の足し算・引き算のコツを学ぶのに効果的でした。私はどちらかというと色々情報を盛り込んで伝えたくなってしまうクセがあったので、必要となる言葉だけで、特に名詞の選び方などで意味を効果的に込めるなどしてシンプルな文にまとめる作業が苦手でした。そんな時、この真逆の発想を取り入れることで、自分が細かく丁寧に説明を加えられるものは、その本質を見極めているからこそ必要なそぎ落とし作業や言い換え、サマリー作りが可能になるのだと学びました。
その他、日本の新聞のみならず英字新聞についても、好きなジャンルは勿論ですが、出来るだけ自分に馴染みのない分野の文章を読むようにしたり、英字新聞の翻訳コンテストにチャレンジしてみたり、また対訳付きの英語関連雑誌を読むようにして訳出のヒントを得たり、また英検などの英語の問題集を眺めて、特に、当時の講師のすすめで工業英検など自分にとっては未知の分野の教材で技術系の表現を学んでみたこともありました。
柔らかい文体と硬い文体それぞれで文章を作成してみる、一定の様式にあてはめて訳す方法と筆者のスタンスを考慮した「役」に入り込んで演じる(訳す)方法を試してみる、といったアプローチも効果的です。そして最終的に、これはこういうケースで使えそうだ、という表現、文章のまとまりをピックアップし、整理してノートを作ったり、英単語については、この時はこういう訳し方もある、というさまざまなパターンを前後文脈や背景と共に書き記して集めるといった方法も役立ちました。
弱点が違えば、学習法もその弱点克服のために試行錯誤を重ねて自らのスタイルを作り上げていく必要があると言えます。「こうすれば自分なりに試せるかも?」というアイデアを思い付くためのヒントとして少しでもお役立ていただけると嬉しいです。
仕事を探す
最新のお仕事情報