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プロ通訳者・翻訳者コラム

気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

和田泰治先生のコラム 『通訳歳時記』 英日通訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 東京校英語通訳コース講師。明治大学文学部卒業後、旅行会社、マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。

第1回:如月

<きさらぎの藪にひびける早瀬かな(日野草城)>

皆さんこんにちは。アイ・エス・エス・インスティテュート通訳者養成コース講師の和田泰冶です。

今月から本コラムを担当させて頂くことになりました。

どうぞ宜しくお願い致します。

さて、本コラムでは、通訳者が一年を通して春夏秋冬どのような生活をしているのかをテーマに執筆してまいります。

昨年2019年一年間の私自身の実際の仕事をすべて振り返り、何時、どのような仕事に如何に取り組んできたのか、通訳現場のみならず、準備や日常の学習など、一日の生活のルーティンも交えて綴ってゆきたいと思います。

私は極々平均的な通訳者ですので、一般的なフリーランス通訳者の一年間をイメージして頂くには丁度良いかと思います。但し、案件的にIT業界の通訳の比重が高いことと、守秘義務があるため、業務によっては詳細な内容やクライアントが特定される恐れのある記述は差し控えさせて頂くことをご了承下さい。

さて、まずは第一回ですのでまず昨年一年間の仕事量をみてみます。以下1月から12月まで、各月の稼働日数と案件数を集計しました。
一日に複数案件が入る日もありますので、稼働日数より案件数のほうが多くなっています。

1月 16日/22件
2月 14日/16件
3月 20日/28件
4月 19日/26件
5月 19日/25件
6月 18日/22件
7月 20日/25件
8月 16日/22件
9月 17日/24件
10月 20日/28件
11月 19日/24件
12月 15日/22件
(合計)213日/284件

一年365日のうち213日、58%の日に仕事をしており、一日の平均案件数は1.33件です。土曜日、日曜日、祝祭日を除いた平日に限れば稼働率は81%なので、ほぼ会社勤めの皆さんと同じくらいでしょう。年末年始とゴールデンウィーク、お盆は仕事が無くほぼお休みです。

前述の通り、私の場合はIT関連の仕事が多いのですが、数えてみたところ全284案件のうち171件で、約60%がIT関係の通訳でした。残りの40%は、金融、官公庁、IR (Investor Relations)、学術関連など様々です。

これからは、毎月特定の分野の実際の通訳現場をピックアップして振り返り、凡庸ながらも真摯に(?)働く1人の通訳者の一年間を詳しく詩情豊かにお伝えしてゆきたいと思います。

次に私の平均的な一日を綴ってみましょう。

起床はだいたい5時から5時30分の間。毎日の日課としている勉強から始まります。具体的には1時間半から2時間、内容はシャドウイングなどのprosody trainingと英会話の学習、英語文献のリーディングです。元来が勉強嫌いの怠け者で、後回しにしたら絶対にやらなくなるのが目に見えているため、勉強はその日の朝一番と厳格にルーティン化して毎日欠かさず実行しています。その後1時間ほどで朝食と着替え、身繕いを済ませて午前の仕事現場へ出勤します。

日によって日中の仕事のパターンは様々ですが、決まっているのは時間が空いていたら必ずどこかで仮眠をとること。午前と午後の仕事の間で相当時間があれば一旦帰宅する場合もありますが、それ以外はどこかコーヒーショップなどに入って1時間くらい昼寝をします。起床が早いわりには夜更かしもするので仮眠は必須です。寝不足の状態で通訳をすると、自分では全く気が付かないうちに集中力が切れ、パフォーマンスが著しく低下してしまいます。「知っているはずの言葉が何故か思い出せない」とか「言葉の発話やリズムが思うように出来ない」というような自覚症状が出たら眠気の有無を問わず黄信号です。

午後の通訳を終えて平均的な帰宅時間は6時から7時。余裕があれば愛犬と散歩へ行ってから夕食。夜8時以降はその日によって違います。翌日以降の仕事で準備が必要な場合はこの夜の時間帯で集中的に準備します。その必要がなければ、スポーツジムへ行ったり、音楽を聴いたり、読書をしてから入浴し、就寝はだいたい午前0時頃です。

こんな感じで一年間、毎日生活しています。

休日は起床時間が8時頃になるだけで朝の勉強のルーティンは365日そのままです。それ以外の時間は仕事の準備が無ければ、平日の夜と同様プライベートな自由時間です。

連載第一回の今月は2月ということで昨年の2月の通訳を振り返ってみますと、稼働日数が14日と少なくなっています。これは2月の第1週にインフルエンザを発症し、丸々一週間の外出禁止となったためです。土曜日に発症したため、すぐに各エージェントに連絡してお詫びをし、翌週月曜から金曜日までのすべての案件をリリースして頂きました。フリーランスで仕事をしている以上、健康管理は死活問題です。特にインフルエンザに感染してしまうと、症状は治まっても一週間の外出禁止となりますので影響甚大です。予防接種は毎年必ず受けているのですが、昨年は運悪く発症してしまいました。

療養明けで対応したこの月の案件はすべてIT関連でしたが、そのうち本稿では、5日間通して外資系ITベンダーが実施した社内トレーニングをとりあげてみたいと思います。

この手のトレーニングとしては一般的な構成ではありますが、自社のソフトウェアについて、セールス担当者を対象に、製品の長所、短所やターゲットとなる顧客のタイプ別攻略法、セールストークの要点、競合他社の製品との比較、顧客からネガティブな反応が出た時の対処法 (よくobjection handlingと呼ばれているもの)などを、本社から来日したトレーナーがプレゼンテーションし、学習した内容をもとにしてそれぞれのモジュール毎にグループでロールプレイングをするという進行です。逐次通訳で実施する場合もありますが、今回はフルスペックのブースを設営し、同時通訳3名での対応でした。時間も長く、複数日にわたるため、意識して集中力をコントロールすることが必要です。

今回は紙面の都合上以上とさせて頂きますが、次回掲載では昨年3月に実際経験した通訳現場から特徴的な仕事を選び、具体的に準備の内容や現場での出来事などさらに詳しく説明してゆきたいと思います。

寒い季節です。インフルエンザにはくれぐれもご注意を!

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