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プロの視点 ー 通訳者・翻訳者コラム


『通訳現場探訪』 ツール・文具編その①
(ノート・筆記具)
和田泰治

第3回

ツール・文具編その①(ノート・筆記具)

 

皆さんこんにちは。通訳現場探訪の第3回は、パソコンやタブレットなどの電子機器以外に通訳者が現場で使っているツールをご紹介致します。既に通訳として仕事をしていらっしゃる皆さんにとってはよくご存知のものばかりかと思いますが、これから現場に出てゆこうという方々は是非参考にしてみて下さい。

 

ほとんどの通訳者の皆さんが現場に持参する共通のツール類としては、以下のようなものがあると思います。
●ノート
●筆記具
●イヤホン
●タイマー

今月はこの中からノートと筆記具についてお話します。
通訳者はノートテイキングをしますので、当然のことながらノートと筆記具は必須アイテムと言えます。ノートについては特定の製品に偏りがあるわけではありませんでしたが、所謂「ステノパッド」とか「ライティングパッド」、「リーガルパッド」と称されるノートパッドの利用頻度が高いようでした。サイズはB5、A4、レターサイズと様々なようですが、共通しているのは「台紙が硬いもの」という点です。机上でノートテイキングするぶんには関係ないと思いますが、「立った状態でノートを取る」(現場視察・見学やレセプションなどの場合)、あるいは「ノートを持って移動する」(ペアワークをしているパートナーの通訳者と場所を交替する)ような際にペラペラの紙の束を持って移動したりノートテイキングをするのは不便だからです。
因みに筆者はA4のバインダーにコピー用紙を挟んで常用しています。

 

 

次は筆記具ですが、これはボールペンということになるでしょう(筆者の経験では、これまで万年筆や鉛筆でノートテイキングをしている通訳者に遭遇したことはありません)。通訳者にとって使用頻度の非常に高い文具であり、また書き味などにかなり個人の好みがあることから各人のこだわりも高く、いろいろとおもしろいお話を伺うことができました。

  

今回お話を伺った通訳者さんがお使いの製品は以下の通りでした。
●三菱鉛筆JETSTREAM(筆者も含め約半数の方が使用)
●ゼブラ サラサ
●ゼブラ タプリクリップ(インクが長持ちするとのことです)
●SAILOR インディゴーゴー
●BIC
●PAPERMATE
●無印良品(デザインがカワイイとのことでした)

  

JETSTREAMは最も利用者が多いブランドです。実際に筆者も随分以前に文具店でいろいろ試し書きしてみた結果、最も書き味が滑らかだったことから購入し、それ以来常用しています。その他の製品もそれぞれの通訳者の方が最も書きやすいと感じて選んだとのことでしたが、ボールペンのインクは紙との相性もあるようで、特定のノートパッドで使うと感動するくらい書き味がよいという意見もありました。

  

ボールペンに関しては、複数の方から「製品によって筆記中の音がうるさいと苦情を言われて別のものに替えた」(苦情はクライアントやパートナーの通訳者から)とのお話もありました。これは全く経験も想定もしていなかったことなので驚きました。

  

ある通訳者の方に伺ったのですが、筆記中の音や書き味に最も影響を与えているのはインクの「粘度」だそうです。専門の文具店にも相談して調べたそうで、この通訳者の方はいろいろ試してみた結果、BICブランドのフランス製のものが最も書き味がよく音も静かでベストだとの結論に達したそうです。同じBICのボールペンでもフランス製とアメリカ製、メキシコ製はインクが異なっていて書き味が違うとのことでした。先日たまたまこの方と現場でご一緒した際にこの三種類のBICの試し書きをさせて頂きました。確かにフランス製のBICは一番書き味がスムーズでした。たかがボールペンされどボールペンとでも申しましょうか。なかなか深いトピックです。

  

ボールペンは太さにも0.5mm、0.7mm、1.0mmなど選択肢があり、これも人によってかなり好みが分かれるところのようです。筆者は通訳の際のノートテイキングや資料への書き込みには0.7mmを使っています(因みに競馬新聞のマーキングには1.0mmの赤がベストです!)。

  

さてこのトピックに関してもう一点付け加えておきますと、まだ少数派ではありますが、ノートテイキングに紙とボールペンではなくタブレットとタッチペンを使っている方もいます。実は筆者も状況によっては試験的にパソコン(Surface Pro)のPDF作成ソフトにタッチペンを使ってノートテイキングをしています。思っていたよりも違和感はありませんし紙の節約にもなります。パソコンやタブレットへの手書きの書き込みについては、保護フィルムによっても手書き入力の書き味が随分変わるらしいので、これからもいろいろ試してみたいと思っています。

  

今月は以上です。次回はイヤホンとタイマー及びその他のツールにいてお話します。
ではまた次回までご機嫌よう。

  

和田泰治先生への質問 コラムについてのご感想や通訳現場についてこんなことを知りたいというご意見が
ございましたらこちらまで是非お寄せ下さい。

和田泰治 英日通訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 東京校英語通訳コース講師。明治大学文学部卒業後、旅行会社、 マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。 スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。

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