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和田泰治先生のコラム 『不肖な身ではございますが・・・・こんな私も通訳です!』 英日通訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 東京校英語通訳コース講師。1983年に明治大学文学部卒業後、旅行会社、マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。

第3回:ディベート修行 -その壱- まずは英会話から!

英語のディベートで勝つためには何をすれば良いのか?と自問自答しつつ過ごした4年間で、最終的に以下の4つの領域それぞれで自分なりの学習法を確立するに至りました。

1. 英会話の表現力
2. ネイティブスピーカーのような発音・イントネーション・リズムで話す能力
3. 討論に必要な英語のボキャブラリーの習得
4. 討論対象となるテーマに関する広く、深い知識

最初の1と2はすなわちスピーキング力です。ディベートは討論ですから話術・話力は必須です。短い制限時間内により多くの情報をわかりやすく、音としても聴きやすくジャッジに伝えるためには優れた英語の表現力(英会話力)も必要ですし、同時に相当のスピード感と明確なリズムで話す物理的な発話力(音韻)も不可欠です。

3と4はスピーキング力ではなく、何を話すかというコンテンツに関する能力です。これが無くては討論など出来ませんし、最終的に勝敗を決めるのはコンテンツです。一般的な英会話で使う語彙だけでは不十分であり、政治や経済など時事問題に関する広範なボキャブラリーを身につける必要があります。そして当然のことながえら討論するテーマに関する知識も相当量勉強しなければなりません。

そして、結果論から言えば、この4つの学習領域こそ、まさに私の考える通訳者として必要な能力そのものだったということなのです。

ということで、今回からは以上の4つの分野それぞれについて学生時代にどのような学習法を始め、それが30年以上を経た現在どう継承されているかをお話します。

まず今月は英会話の表現力ですが、そもそも入学当初は声に出して英語を話したことなど全くないわけですから、どうしてよいのか皆目わかりません。そんな時、入部してしばらく経ったある機会に、英語部の顧問のアメリカ人の先生が勉強法を教えて下さいましたが、これが自分にとっては生まれて初めての英会話の勉強でした。

当時英語部の新入生はNHKのラジオ英会話のテキストを毎月買うように指導されていましたが、どうやって勉強すればよいのかもわからない状態で全く何もしていませんでした。顧問の先生が教えて下さった方法は、「このテキストに出てくる会話文を10回ずつ音読しなさい。そうすればその文章を暗記できるはずだから、そうしたら次の文章をまた10回ずつ音読して暗記しなさい」というものでした。ある友人が、「10回音読しても暗記できなかったらどうすればいいんですか?」と質問したところ、返ってきた答えは、「それじゃあ、君は20回ずつ音読しなさい」というものでした。

それ以降、この「英会話のテキスト丸暗記」という学習法が私の英会話の勉強の基礎となり、現在まで延々と続いています。学生の頃のNHKラジオ英会話は東後勝明先生が担当されていらっしゃいました。それから卒業して社会人になり、転職もし、通訳スクールに通学し、通訳者として仕事を始め、今日に至るまで、教材として利用する講座は変遷してきましたが、全く同じことを続けています。因みに現在はやはりNHKラジオの「実践ビジネス英語」のテキストを使っています。

それではここで、この学習法が何故効果があるのかということを考えてみたいと思います。

基本的な考え方は、何か英語で話をしたいと思った時に、「まず日本語の文章を思い浮かべ、単語単位で英語に変換し、文法の知識等を駆使して英文を組み立てて話す」というプロセスではなく、「出来る限りセンテンス単位の英語のボキャブラリーを増やし、必要に応じてそのセンテンスを丸ごとダイレクトに頭の中から引っ張り出してくる。あとは必要に応じて単語などを入れ替えて話す」というプロセスに考え方を変えるということだと教わりました。センテンス単位のボキャブラリーとも言えますし、シチュエーション単位のボキャブラリーと言ってもいいかも知れません。文法を意識して単語を組み立てるというステージを飛ばしていきなり自分の言わんとする状況やイメージに応じたフレーズや英文が出てくるようにするというアプローチです。

これは当時の自分にとっては革新的な考え方の変化をもたらし、英語を話すという作業が、「頭の中で英単語やイディオムを思い出す、主語、述語、目的語・・・・と文型を考える、英文を組み立て終えたら話し始める・・・」という従来の受験英語的発想から、「話すコンテンツのイメージを思い浮かべたら即座に英語が口をついて出るようにするためにトレーニングをする」という発送に転換しました。

決して万人に効果のあるアプローチではありませんが、少なくともゼロからスタートした私にとっては目から鱗の大きな転機になった貴重な勉強方法です。

次回は第四回「ディベート修行 -その弐- ネイティブスピーカーのような音韻で話す!」です。

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