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気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

和田泰治先生のコラム 『不肖な身ではございますが・・・・こんな私も通訳です!』 英日通訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 東京校英語通訳コース講師。1983年に明治大学文学部卒業後、旅行会社、マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。

第10回:分野別通訳の話・IT通訳-その1<IT通訳の会議形態的分類>

ようやく秋晴れの毎日が続く心地よい季節になりました。皆さんも仕事に勉強にスポーツにと様々に精を出していらっしゃることと思います。

さて、今回からはIT関連の通訳についてお話してみたいと思います。この分野は前回までお話したIR通訳とは好対照で、IT通訳と言っただけではあまりに範囲が広範で掴みどころがありません。

例えば皆さんがいつも使っている携帯電話やスマートフォンを例にとってみましょう。中にはCPUやメモリ、ベースバンドチップやアプリケーションチップなど様々な半導体チップが搭載されています。さらにオペレーティングシステムをはじめてとしてメールやインターネットブラウザなど多数のソフトウェアがインストールされています。そしてディスプレイパネルも含めてこれらすべてが個別のIT技術であり、それぞれの開発過程やビジネスミーティングに通訳者が関わる機会が数多くあります。

端末だけではありません。移動体通信網で音声通話やデータ通信を行うために各通信事業者は巨額の資金を投じてインフラを整備しています。基地局や交換機を中心とした通信ネットワークには様々な通信機器やストレージシステムなどが利用されています。これに加えて、多彩な通信サービスを提供したり、ネットワークや加入者の管理、セキュリティを実現したりするために通信ネットワークの中には多数のコンピューターシステムが組み込まれています。この通信インフラを経由してコンテンツの配信やネット通販、ネットバンキングなどのサービスを提供しようとする企業もまた彼ら独自のシステムを開発し実装しています・・・・・・・

・・・・・とこれだけでも「IT通訳」の膨大な守備範囲を何となく実感して頂けるのではないでしょうか。このコラムではIT通訳に興味のある皆さんがこの漠然とした世界にどのようにアプローチしていったらよいのかを会議形態別、IT分野別に分類しながら説明してゆきたいと思います。今月はまず第一回として会議形態別に分類してみましょう。

通訳がITに関わる場合は外資系のITベンダーと顧客である日本企業との間のコミュニケーションが中心となりますが、まずIT業界における「顧客」の考え方を説明しておきます。

日本のIT流通市場で中心になっているのはシステムインテグレーターです。エンドユーザーがシステムを構築する場合は複数の異なるベンダーの製品を組み合わせたり、開発したりする必要がありますが、これをコーディネートしてひとつのシステム(ソリューションと呼ぶ場合もあります)としてまとめ、提供するのがシステムインテグレーター (SI) の役割です。
ベンダーから見てみますと、この商社(あるいは卸売業者)的な役割を果たすシステムインテグレーター(パートナーとも呼ばれます)の先にエンドユーザー企業がいるという構図になっています。この仕組みを覚えておいて下さい。

それでは通訳者が関わる会議形態を分類してみましょう。

(1)顧客訪問
個別の顧客訪問の目的は単なる表敬訪問から商談、新製品の技術的なプレゼンテーションなど多岐にわたります。公式な入札を受けての提案のプレゼンテーションなどもあります。

(2)顧客セミナー(パートナーセミナー)
エンドユーザーやパートナーを招待して実施されるもので、新製品のリリースやM&Aに伴う新体制の発足などに合わせて行われることが多いようです。規模は数十人から数千人規模のものまで様々ですが、大手IT企業の場合にはホテルや大きな会場を数日間借り切って巨大なイベントを行う場合もあります。セミナーでは経営幹部や開発担当者、ゲストのプレゼンテーションや製品のデモンストレーションなどが多数行われます。

(3)プロジェクト関連会議(技術検討会・マネジメント会議)
商談が成立したり入札で製品やシステムの採用が決定したりすると具体的な開発、実装、運用のプロジェクトが開始されます。顧客とベンダー企業の間で定期的に進捗や問題点を協議しながら進めてゆきます。プロジェクトは数ヶ月から一年以上続く場合もあります。技術検討会はエンジニア同士がかなりテクニカルな議論を交わす場となります。マネジメント会議では主にスケジュールの進捗や契約内容などプロジェクト全般について議論します。

(4)トレーニング(研修)
多くの外資系ITベンダー(特にソフトウェアベンダー)は自社の製品についてのトレーニングプログラムを開発しています。製品を熟知した専任のトレーナーが世界各国をサーキットして数日から一週間程度のトレーニングを社内、社外向けに実施します。トレーニング頻度の多いベンダーの中にはオフィス内に専用のトレーニングルームを持っているところもあります。通常はテキストを利用した講義とソフトウェアをインストールした実機を参加者が操作しながら体験学習する “Hands-on training”を組み合わせたプログラムが多くなっています。トレーニングのレベルも広範にわたり、初心者対象で製品の概要を中心としたベーシックなものから、社内のトレーナー育成のためのトレーニングのように相当に高度な内容のものまであります。

以上今月はIT通訳を会議形態別に分類してみました。次回は、膨大なITの分野自体をいくつかの切り口で分類し、ご紹介してみたいと思います。

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