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気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

西山より子先生のコラム 『Baby Stepsではありますが』 上智大学外国語学部英語学科卒業。総合電機メーカーにて海外営業職を務めた後、経済産業省外郭団体の地球観測衛星運用チームにて、派遣社員として社内翻訳通訳に従事。翻訳会社でコーディネーター兼校閲者を経験した後、フリーランスとして独立。主に、国際協力、地球観測衛星、原子力発電、自動車など、産業技術系実務翻訳通訳を手がける。

第2回:目指すのは語学屋?それともコミュニケータ?

先日都内を突然襲った大雪は、皆さんどのように凌がれましたか。悪天候の日はしばしば、「よし、今日は徹夜決定!」と朝から覚悟を決め、子どもに保育園をずる休み(?)させて家から一歩も出ず、ニュースで終始流れる交通機関の乱れについても「大変だー」と他人事として眺めるだけで、「在宅ワークで本当によかった」と神様に感謝しているのですが、今回に限っては生憎都内での仕事が入っており、酷い目に遭いました。在宅ワークのメリットは、私にとってはなんと言っても①通勤ラッシュ知らず、②すっぴんで過ごせる、③晴れの日に布団が干せる、です。

さて今回は、そもそも何故翻訳者を目指したのかをお話ししたいと思います。父の転勤により高校の2年間をイギリスで過ごし、ちょうど英語が「苦」ではなく、楽しい、面白い、と思えるようになった頃帰国しなければならなかったので、もう少し英語の勉強を続けようと大学は迷わず英語学科を志望。英文学や音声学の授業と並んで翻訳と通訳の授業も履修しましたが、クラスの半分以上は帰国子女や隠れ帰国子女(入試は帰国枠ではなく一般入試または推薦で入ってきているもののそれ以前に海外に住んでいた人たち)という環境で、自分の英語力の無さを突き付けられる日々でした。勉強は楽しかったですが、(「英語で」ではなく)「英語を」仕事にするのは夢のまた夢、と思っていました。それでも、大学4年間で英語しか勉強していないわけで他に武器がない、ということで就職は電機メーカーで海外営業。でも、それが「自分のやりたいこと」とは思えず、入社当時から「3年内にやりたいことを見つけなければ」と思っていました。

その自分との約束の丸3年が間もなく経とうという頃、私は焦っていました。最初の3年は「営業の見習いちゃん」で仕事の至らなさにも言い訳がつきましたが、4年目ともなれば一人前。果たして自分は「プロの営業」と呼べるのか、そしてそれ以上に、果たして自分は「プロの営業」になりたいのか--そうこう悩んでいるうちに、ぼんやりと抱いていた翻訳通訳へのあこがれが具体的に形を持ってきたのです。1つには、海外営業の業務の中で私が最も遣り甲斐を感じ、そしてプライドを持って従事できていたのが、上司に代わって英文のビジネスレターを書いたり、米国人のお客様を青森にある工場へ連れて行き、津軽弁のおいちゃん達との間の通訳をしたりする場面だったことから、他にもっと優秀な人がいようといまいと、やはり好きなのだから目指してみようと思えたこと。1つには、男性と同等に渡り歩くために独身のまま仕事一筋で走り続ける女性の先輩や至極優秀な女性の先輩が出産を機にアシスタント職になる様子などを見ながら、女性として結婚・出産と両立させつつ遣り甲斐を持っていつまでも続けられる仕事を考えた時に在宅翻訳が最適に思えたこと。そして、もう1つには、翻訳や通訳というのは、言葉だけの問題じゃない、ということに気づけたことが理由です。と申しますのは、部内会議などの議論の場で、ある出席者の質問に対して別の出席者が返す発言のポイントがずれていて質問の回答になっていないことが少なくなく、そんなとき、入社1~3年目の若輩者の私ではありましたが、「○○課長が質問されたのは~~~という意味で、、、」となぜか日本語から日本語への通訳をすることが度々あったのです。そんな経験を通じて、訳出の第一歩である筆者や話者の言わんとしていることを理解するという段階において、ひょっとして私にもマーケットがあるのではないか、と思えたのです。

大学時代に通訳の授業そして卒業翻訳の指導教員としてお世話になった異文化コミュニケーション専門のI先生は「翻訳・通訳というのは、言葉の置き換えではなくメッセージを伝えるコミュニケーション」と常々おっしゃっていました。プロを目指すにあたり、まさしくそれが私の指針となり売りとなるのですが、残念ながらI先生は、2年前、亡くなられました。ここに改めまして感謝と哀悼の意を捧げます。

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