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気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

西山より子先生のコラム 『Baby Stepsではありますが』 上智大学外国語学部英語学科卒業。総合電機メーカーにて海外営業職を務めた後、経済産業省外郭団体の地球観測衛星運用チームにて、派遣社員として社内翻訳通訳に従事。翻訳会社でコーディネーター兼校閲者を経験した後、フリーランスとして独立。主に、国際協力、地球観測衛星、原子力発電、自動車など、産業技術系実務翻訳通訳を手がける。

第7回:いざ独立!

初回のご挨拶で申し上げましたように、今年でフリーランス生活も10年となりました。10年前、それまで勤めていた翻訳会社を辞めて独立したわけですが、それは、それまで抱いていた「独立!」という華々しいイメージとは大きく違っていました。

翻訳者になりたくて電機メーカーを辞めて勉強を始めたわけですから、最終的にはフリーランサーになるのが目標なわけですが、では、いつがそうなれるタイミングなのか。フリーを目指す方なら皆さん悩むところだと思います。フリーとしてやっていけるほどの実力が自分にあるのか、フリーになってもちゃんと収入を確保できるのか、「就業時間」の縛りなく自主的に時間管理ができるのか、などなど。

10年前の当時、「私はもう十分にフリーでやっていける」という自信や確信があったわけでは決してありません。むしろ、フリーになるのはまだまだ先ということはわかっているものの、このままコーディネータ職を続けていていいのか、というのがメインの悩みでした。前回長々と語りましたが、コーディネータの仕事は学ぶところが多く、かけがえのない経験を積めます。でも、最終目標が決まっている以上、いつかはどこかでmanageする側からplayerに移らなければなりません。私の勤めたA翻訳会社では幸い、コーディネータをしながら自分でも多少は翻訳したり校閲したり、実績につながる経験もできましたが、それでも2年間コーディネータをしていると「朝から晩まで翻訳していたい!」という渇望が抑えられないところまできていました。それにはやはり、もう一度派遣社員などで社内翻訳者のポジションを探すのが良いのではないか、と考え、「翻訳業界の現場を経験して人脈を作る機会としてここで1~2年働いてみては」と私を採用してくれたB社長に、そろそろ次なる一歩を踏み出したい、と打ち明けました。

そこでまたB社長からは思いがけない提案が・・・。「フリーになっちゃえば?フリーになっちゃって溺れそうになりながらも必死に大海を泳いでみるのが一番力がつくんじゃないかな」。これまたソフトな口調で、清水の舞台から突き落とすようなことを言ってくれたわけです。この言葉に強く刺激を受け、そこから真剣に「今、フリーになる」ことについて考えました。確かに、「さあ、もう自信がついたから独立しましょう」と思える日は一生来ないかもしれない。銀行口座には、最悪1銭も稼げなくても1年間は生活できるだけの貯金があるから、フリーとしてうまくいかなかったら、半年後に改めて社内翻訳者の仕事を探し始めても遅くないかもしれない。あるいは、フリーだろうが社内だろうが、そもそも「翻訳者」に適さないということであれば、またA社にコーディネータとして雇ってもらえるかも?との甘えがあったことも事実です。そうこうして、10年前、実力も中途半端なまま、私はフリーとなる決断をしたわけです。

それから早10年・・・。社内翻訳者になることもコーディネータに戻ることもなく、なんとかかんとか、沈没することなくこの大海を泳ぎ続けることができています。それもこれも、翻訳業界やプロの厳しさを教えてくれた今は亡きAB会長、フリーになるきっかけをくれたB社長、さらにはコーディネータ時代にビシバシしごいてくださったお客様や翻訳者の皆様のおかげです。

・・・と、まるで本コラム連載を締めくくるような口調となってきましたが、残念ながら来月もまだ続きます!次号からはフリーになってからの紆余曲折の話に入りま~す!

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