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気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えいたします。



【NEW】通訳者 丸尾一平の『通訳業界よもやま話』第11回:フリーランスでの通訳のお仕事について

さてさて今回はフリーランスのお仕事についてもちょっとお話しましょう。

こちらのコラムを読まれている方々は、アイ・エス・エスのホームページの派遣のページからいらっしゃる方が多いとのことで、フリーランスでお仕事されている方はそんなにいらっしゃらないかもしれませんが、将来、フリーランスの通訳者として活動したい、という目標を持っていらっしゃる方は少なくないのではないかと思います。

フリーランスのお仕事の内容ですが、これは種々様々、要は英語と日本語の間でコミュニケーションを図るニーズがあれば、どこでも仕事が発生するわけですから、ビジネスの世界、しかも多くは会社内のコミュニケーションに特化しがちなインハウス通訳者に比べて、お仕事の幅は当然、ぐんと広くなります。

そんなわけで、どんなお仕事があるのか、すべてをご紹介することは到底かないませんが、フリーランスでの通訳を始めて3年目、まだまだ「駆け出し」であるワタクシが日々どんな業務をしているか、幾つかご紹介しましょう。現在のフリーランスとしての私の業務はほとんど9割以上方、ビジネスの世界でのお仕事になりますので、こちらで紹介する内容もビジネスの世界に偏ってしまいますが、ご容赦くださいませ。

Investor Relations (IR) 個別ミーティング業務 

海外から来日された投資家の方々が、日本の事業会社のいわゆるIR担当の方々と会って、株式投資のために必要な情報を聞き出すお手伝いをします。大抵の場合は、外資系含む日本の証券会社が手配を行い、投資家1-2名、事業会社のIR担当者数名、場合によっては証券会社の担当者が同席することもありますが、小規模なミーティングにおける逐次通訳業務になります。

投資家の方々が、自分の足で一日数社、自分の興味のある事業会社を回り、通訳者がそれに随行するような外回りのお仕事もあれば、大きなカンファレンスで、多くの事業会社と、海外からの投資家をホテルなどの会場に一同に集めて、言って見れば「花いちもんめ」状態で(笑)、投資家と事業会社を引き合わせてミーティングが行われるようなケースがあります。いずれのケースでも一件のミーティングは大概、小一時間から一時間半くらいまで、通訳者はそれを一日数件こなすことになります。

それと、海外にいる投資家と日本の事業会社IR担当の間の電話会議なども多いですし、自分は行ったことがありませんが、日本のIR担当の方が欧米へ1-2週間出向いて現地でいろんな投資家と会って話すお手伝いをするような形の業務もあります(この場合は当然海外出張になります)。

ここ数年来、海外からの日本への投資が増えるにつれ、非常にニーズが高まってきた経緯があり、駆け出しの通訳者にまず真っ先に入ってくる類のお仕事ではないかと思います。私のお仕事の中でも割と比重が大きいお仕事です。ただし昨今のリーマンブラザーズショックもあり、投資が相当に冷え込んでいる今、こちらの業務のニーズが今後どうなっていくのか、ちょっと読みづらい部分がありますね。

IRカンファレンスにおける「ラージ」ミーティング同通業務

上記のようなIRカンファレンスが開催される際には、このような個別ミーティング(One on One、あるいはスモールミーティングなどと呼ばれる)とは別に「ラージ」と呼ばれる、事業会社や証券会社アナリストあるいはその他有識者の方々が大勢の観衆を前に行う講演や、パネルディスカッションなどがあり、その際に同時通訳を提供する業務もあります。いわゆるブース同通のお仕事になり、またこうした講演においてこのテのカンファレンスの言わばメインイベントでもあるわけで、駆け出しの通訳者にこのような仕事が回ってくることはほとんどありえません(苦笑)

スモールにせよラージにせよ、IRの世界でお仕事には、PL(損益計算書)・BS(バランスシート)の見方といった企業会計や、それに併せて株式その他投資の世界がどのような仕組みで回っているのか、といったところの基礎的な知識が必要になります。それに加えて、会社訪問前には当然その事業会社の事業や業界がどういうものなのか、下調べをしていくことになります。

システム・ソフトウェア実装やシステムインテグレーションにおける通訳業務

いろんなケースがありますが、システムなどを実装する際には当然、ベンダーやシステムインテグレータといった会社と、実際にそのシステムを導入するクライアントの間で要件収集、仕様の確定、実際の実装の作業指示など、開発・実装の各段階で様々なコミュニケーションが必要になります。ベンダーなりシステムインテグレータが外国の会社であった場合、海外から専門家を呼び寄せて日本のクライアントとコミュニケーションをとってもらうことが必要になり、通訳のニーズが発生するわけです。

また、実装はるか手前の段階で、海外・外資系のソフト会社やインテグレータなどがいろんな会社を回り、自社製品を売り込むことも多々ありまして、その際にも海外から専門家が来日して通訳者を使う場合も少なくないようです。逐次やウィスパリング対応が基本になります。

IT系カンファレンスにおける通訳業務

IRカンファレンスと似ていますね。海外・外資系のソフトウェアベンダーやリサーチ会社などが、日本のユーザなどを一同に集めて、大きなカンファレンスを行うことがよくあります。そこでも様々な講演の同時通訳業務、記者会見や専門誌インタビューなどにおける逐次通訳業務、ユーザ・クライアントとの個別ミーティングなど通訳の需要が大量に発生するケースが多いのです。

研修業務における通訳業務

これも結構多いですね。例えばこれまた、ソフト会社などが、ユーザ向けに実施するトレーニングですとか、営業マン向けのセールストレーニングなど、内容は千差万別です。逐次の仕事が多いように思えますが、同時通訳の場合もあります。トレーニングの場合は完全に一日こっきりで終わるお仕事よりは2-3日から、1-2週間、と連日に渡る業務が多いので特にワタシのような駆け出しにとっては「スケジュールを埋める」という意味ではうれしいお仕事かもしれません(笑)

役員会議における通訳業務

特に外資系の会社など、役員に外国人の方々が名を連ねている会社も多く、そういった場合、役員会議や、その他、お偉いさんレベルでの社内会議について通訳需要が発生することが多いのです。逐次・ウィスパリング対応であることも、本格的な機材を使った同時通訳業務であることもありえます。

そのほかにも、工場見学ですとか、クレーム処理ですとか、人事などの各種社内ミーティング、カンファレンス、M&A(企業買収)に先立つデューディリジェンス(精査)や交渉やその他大きなイベントにおける講演やパネルディスカッションの通訳業務、自分が経験しただけでも多岐にわたるお仕事がありますし、自分の体験の外、特にビジネス以外のアカデミックな分野・芸能・スポーツ分野などのお仕事まで含めれば、ここに紹介したのはほんの、氷山の一角、とすら言えないようなささやか過ぎる一例に過ぎません。

次にフリーランスで通訳を行う際の契約形態について、お話します。業界のスタンダードと言って差し支えないかと思いますが、料金については、一般的には半日・一日単位が基本になります。どういうことかといいますと、例え30分の会議のために呼ばれたとしても、料金はあくまで半日分の料金が発生する、業務が半日を超える(通常半日は3〜4時間までと定義されます)あるいは午前午後をまたぐ場合には一日料金が発生する、ということです。

一見、通訳者にとって有利すぎる、ぜいたくな条件に思えるかもしれませんが、これは通訳者を守るためには必要なことなんではないかと思います。例え30分の仕事だとしてもそれを引き受けた通訳者は、資料の読み込み、用語のチェックなど、そのための準備を行い、また時間をかけて業務場所まで移動をしなければならない(都内であれば大概往復に少なくとも一時間はかかるでしょう)わけで、それに対して見返りが30分分の料金でしかない、ということになってしまうと、ほとんどのフリーランス通訳者はにっちもさっちも立ち行かなくなってしまうわけでして。

半日・一日料金の相場については、この場で触れることは控えておきましょう。これもいろいろな意味においてピンキリの世界でありますので、下手に数字を出して皆さんの期待値を誤って設定してしまうことは避けたほうがよろしいかと思います。ただ前述いたしましたが、単純に一日当りで見れば派遣のインハウスに比べればかなり高めの数字にはなります。(というか、そうでなければリスクを冒して敢えて不安定なフリーランスになる意味が、少なくとも経済的にはなくなってしまいますよね。)

また依頼がドタキャンになった場合などはキャンセル料金が発生します。エージェントさんによって多少ばらつきがありますが、1-2週間以内のキャンセルであれば、通常は料金のXX%といった形でキャンセル料金が発生します。

お仕事はいわゆる通訳エージェントを通す場合と、通さずに直接クライアントから仕事を請ける場合と、二通りあります。私の場合は業務の8-9割方はエージェントからいただいたお仕事ですね。直接クライアントから引き受けるお仕事は、当然間にエージェントが入っておらず、搾取・・・あ、いやいや失礼、エージェントの取り分(笑)がない分、通訳レートは高めに設定することができます。

が、その反面、エージェント経由であればエージェントに任せてしまえるような、通訳事情に疎いクライアントの教育やら細かい事務関係の書類作成ですとか、こまごまとしたやり取りまで全て自分でこなさなくてはならなくなります(これが結構時間食ったりするんですよ)し、あるいは通訳料金が回収できなくなるリスクも抱えることになります。

しっかりとしたエージェントが間に入っていれば、仕事をしたのに料金が支払われない、ということはまずありえません。直接クライアントからお仕事を引き受けた場合、仕事をしたのに料金が支払われない、という最悪のケースはさすがにあまりないとは思いますが、特にドタキャンの際のキャンセル料金の支払いについては、揉めるケースも多いようです。

人によるとは思いますが、フリーランスの通訳者はそれぞれ皆さん、5-6社、あるいは場合によってはもっと多くの通訳エージェントに登録していて、そのうち、コンスタントにお仕事が入ってくるのは2-3社、というケースが多いです。

最後にフリーランス通訳者としてデビューすると、特に最初はとにかく土壇場のショートノーティスでの業務の依頼が舞い込んでばかりで、あまり先のお仕事が回ってこない、という状況に陥りがちになるのではないかと思います。考えてみれば当たり前の話で、例えば通訳エージェントであれば、今まで付き合いの長い、実績のある通訳者から先にお仕事を振っていきますので、新参者に回ってくるお仕事というのはよっぽど通訳者の数を確保しなくてはならない大きなカンファレンス等でないかぎり、言い方が悪いですが、おこぼれ、他に誰もいない、あるいは急ぎで誰かつかまえなきゃならないような依頼が多くなるんじゃないかと思います。

最初はそういったお仕事を一つ一つきちんとこなして実績を積んでいかなくてはなりません。

インハウス通訳者の辞め時、のところでもお話しましたが、フリーランスとしてデビューするには、そういった「今日の明日」で入ってくるお仕事を、いかに一夜漬けの努力で、少なくともクレームが出てこないレベルのパフォーマンスこなせるか、そのための通訳者としての地力が必要になるのではないかと思います。

さてさて、このコラムも次回をもって最後となります。
最終回は、通訳スクールの勧め、でございます。




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