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プロ通訳者・翻訳者コラム

気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

加藤早和子先生

加藤早和子先生のコラム 『いつもPresent Progressive』 南山大学卒業。特許文書翻訳、調査会社勤務を経て、アイ・エス・エス・インスティテュート同時通訳科で訓練。
現在はフリーランスの会議通訳者として、医学・獣医学、薬学、バイオテクノロジー、自動車、情報通信、環境、知財、財務、デザインなど幅広い分野で活躍中。

第3回:フリーランスになる【NEW】

こんにちは。

多くのフリーランスの通訳にとって2月から3月のこの季節は確定申告の時期。
収支のまとめと同時に、過去1年間のお仕事の傾向がどうだったかも振り返るタイミングでもあります。

この一年間で、自分の仕事ぶりはどうだったか、少しは進歩があったのか、どんな分野が多かったのか、もしくは少なかったのか、クライアント側に何か変化はあったか(最近はM&Aやスピンオフなど変化は多いですよね)、また、仲間とは気持ちよくお仕事ができたか、先輩や後輩と一緒にお仕事した時はスムーズに進められたか、そう言えば初めてパートナーを組んだ方々もいたな、迷惑をかけることはなかったかな、慣れた業務でも真摯に努められたか、クレームはなかったか、新しい分野を開拓できたか、など、反省点もあれば、無事に終わってほっとしたこと、自信につながったこと、いろいろと考えることができます。

それから、電車が遅れて遅刻しそうになってヒヤヒヤしたとか(最近は混雑などでダイヤが遅れがちです、ご注意を・・)、乗り換えを間違えて遅刻したとか(はい、そんなこともありました・・)、長い間にはいろいろとあるものです。時間厳守ルールも含めて、業務以前の社会常識はきちんと踏まえておかないといけません。

フリーランスであればそれぞれが独立した存在。
失敗して上司に怒られたりすることもないですが、逆に組織によって守られることもありません。基本的に自己責任ですから、しっかりとした自己管理が必要です。

筆者の場合、ほんの短期間の間会社員だったこともありましたが、社会に出てからの大半はフリーランスの立場です。たまたま社員としての社内通訳の経験はありませんが、ほぼ社内通訳と呼べるような業務からスタートしました。その時の家の事情を考えても、時間の自由のきくスタイルが助かりました。

時々、「フリーランスってどんなものなのですか?」といった質問を受けることがあります。

筆者の場合、会社員の立場とフリーランスの違いはかなりあると思っています。

特に初期の頃は、フリーでお仕事をするほうがはるかに消費エネルギーが多いというか、気力も体力を使うと感じたものです。初めのうちは、一日終わるとぐったりで、夕方から習い事をしようなどという余裕は全然ありませんでした。
業務時間に集合した瞬間から、自分の時間はクライアントに預けたようなもので、(と書くと極端に聞こえますが)、業務が最優先。お客様から見れば通訳サービスを受けるために依頼しているわけですから、こちらも常に満足していただけるように集中し、気遣いをしなければなりません。

社内通訳からフリーランスへの移行期も、こんな悩みはあるかもしれませんね。

結局、フリーランスの立場ですと、単独で責任を持って業務を引き受けるわけですから、上手くいってもいかなくても基本的には自分の責任。
自分の両足でしっかり立ってどっしりと引き受ける姿勢も必要です。年数を重ねるうちにそうした姿勢が身についてくるように思います。長年のキャリアを積んでいらっしゃる先輩を見ると、多分長い間に様々な状況でとても難しい局面を経験されてきているのだろう、と思わせる佇まいがあるように思います。
ある意味の大胆さと慎重さの両面が必要です。
通訳のお仕事に限ったことではありませんが・・・。

スケジュールや時間の管理も自分で行います。準備のための時間や自分の能力、体力も考慮して、オファーされた業務を引き受けるか否かを自分で決めて管理をします。誰も指示をしてくれる人はありません。

急にお仕事がキャンセルになることもあり、自分が予定した通りに物事が運ぶわけではありません。初期の頃は、それによる仕事量と収入の増減や不安定なスケジュールをストレスに感じたこともありました。
そのうち、そんなものだと割り切って、急にお休みになっても即気分を切り替え、自分の行きたかったところへ行ったり、やりたかったことを楽しめるようになって、慣れていきました。この点では、楽観的な性格の方がフリーランスには向いているかもしれません。

また、お客様やエージェンシーの人たちともうまくやっていく必要があります。
常識以上にうまくやる秘訣があるわけではありませんが、これはこれで一つのトピックになりそうな話題です。

フリーランスですと、組織の中での人間関係の難しさに絡め取られることはほとんどありませんが、守ってくれる帰属組織がないということは、逆に、社会に直接肌で触れているような気分もあります。
個人でビジネスをしている人たちは、商店街の小さな商店であっても社会の風を直接受けて、世の中の移り変わりを大なり小なり直に感じているものです。フリーランスの通訳業もそのような面があります。ちっぽけな小舟ですが、自分で感じて考えて決めて進む、その繰り返しです。

周りを見ても、フリーで活躍している仲間は皆独立心も旺盛ですし、たくましいです。女性が自立できる職業としてとても有効でしたし、今でもそうだと思います。

毎日同じオフィスに出勤する日常のリズムと安定も捨てがたいものがあるでしょうが、仕事の広がりとステージアップを求めるならフリーランスも選択肢。
結局、自分自身の性格や周囲の状況に合わせて、一番自分に合ったスタイルがいいのかもしれません。

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