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加藤早和子先生

加藤早和子先生のコラム 『いつもPresent Progressive』 南山大学卒業。特許文書翻訳、調査会社勤務を経て、アイ・エス・エス・インスティテュート同時通訳科で訓練。
現在はフリーランスの会議通訳者として、医学・獣医学、薬学、バイオテクノロジー、自動車、情報通信、環境、知財、財務、デザインなど幅広い分野で活躍中。

第4回:専門分野? その①【NEW】

こんにちは

世の中の景気の諸相に連動して、通訳依頼を受ける分野は変遷してくるものです。これまでに書いたように、筆者の場合、最初は自動車産業のグローバル化の流れの中での業務から始まり、IT、技術、科学系の分野に展開して、現在は医療・医薬分野が8割ぐらいの仕事量になってきました。その他、件数は少ないですが、もう少し文系よりの分野とか芸術・デザイン系の分野も時折あり、筆者の興味もあって楽しくお仕事させていただいています。

自動車分野でも、いわゆる「ものづくり」そのものに関わることから、ICT・IoTや新しいエネルギーの様態に関する側面によりシフトして来ています。いつまでも化石燃料は使えないですから、次はどうしてゆくのか、様々な努力や研究が進んでいるようです。

通訳業務では、新聞記事などで読んで知る出来事の一端に直接触れ、当事者等からお話を伺うことができます。
そういった最先端のトピックに触れたり、実際に携わっている専門家にお会いしたり話を聞いたりする機会が得られる、これが通訳のお仕事の醍醐味の一つでもあります。新しいことを知り、実地で感じることができる、それに対する好奇心も継続のドライバーです。

最近は、分野間の境界線がどんどんクロスオーバーしてきていて、ITと他分野の組み合わせもよくあります。
FINTECHはもとより医療分野でもITの活用は多くみられます。ビッグデータやAIはどの分野でも普通に語られるようになりました。
ITや画像技術の進歩により新しい分子生物学的な観察方法などが登場してきて、ヒトや生物の解剖学が更新されることもあるようです。

普通はITと結びつけては考えないような分野もしかりで、歴史学や古典籍の研究でもオリジナル文献のデータベース化が進んで新しい分析や利用の仕方が探索されたりして、とても興味深いと思います。もしかしたら、一般的な通説が塗り替えられたりするような見解や新説も登場するかもしれません。教科書で教わったことや思い込みにとらわれず、客観的でオープンな姿勢を保ちたいものです。

振り返れば、日常生活にもスマホやパソコンを始めIT機器が深く浸透してきているわけですから、IT技術を利用して新しいニーズを展開したり、より便利にしたりという動きは自然な流れかもしれません。

辞書だって紙の辞書から電子辞書に短期間に移り変わりましたし、私の世代の方々であれば、紙→電子辞書の変遷も体験していますよね。昔あったカセットテープのウォークマンのサイズだった電子辞書は、どんどん小型化されて辞書データの種類も増えました。筆者は、最近はタブレットにいろんな辞書をインストールして使っています。辞書のベンダーさんにはこれからも安定して良質の辞書アプリの提供を継続して欲しいものです。
辞書の話題だけで一章を費やせそうな気がしますが、それはまた改めて。

専門辞書の充実もありがたいものですが、肝要なのは通訳としてどうアウトプットするかだということはいうまでもないでしょう。
専門用語の洪水におぼれることなく、日本語も英語も基本的な構文・表現がしっかりしていること、相手に伝わるデリバリーをすること、これらができていなければ、内装は凝っていても柱は脆弱な建物みたいなものです。
日常では使わないような専門用語を口にしたり難しい用語を使うことで、何か特別なことができているような気分に陥らず、基本が着実であること。
そのためのひとつの姿勢として、いくら専門分野の業務を受けてこなしたとしても通訳者自身が専門家にはなり得ない、という単純な事実を忘れないことだと思います。
そう、いくら頑張って事前勉強しても、通訳者は「経の詠める門前の小僧」にはなれないと筆者は思っています。

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