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気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

西山より子先生のコラム 『Baby Stepsではありますが』 上智大学外国語学部英語学科卒業。総合電機メーカーにて海外営業職を務めた後、経済産業省外郭団体の地球観測衛星運用チームにて、派遣社員として社内翻訳通訳に従事。翻訳会社でコーディネーター兼校閲者を経験した後、フリーランスとして独立。主に、国際協力、地球観測衛星、原子力発電、自動車など、産業技術系実務翻訳通訳を手がける。

第11回:効率的な勉強法について

人から仕事を聞かれるとき、私は「英語屋です」と答えるようにしています。前回お伝えしたように、業務は翻訳と通訳の両方ですから「翻訳者です」でも「通訳者です」でも不十分ですし、さらにはフリーランスになったのとほぼ同時期からISSのスクールで講師も務めているので「翻訳通訳者兼翻訳通訳の講師です」では長すぎるので、3つの共通項を取り「英語屋」と言うのが一番手っ取り早いというわけです。

初めて講師のお話を頂いたときは、自分がまだまだ勉強足りないのに人に教えるなんてもっての外!と思いましたが、いろいろな方面の人に教える仕事をしている知人らに話を聞いたところ、異口同音に「人に教えることは自分の勉強に一番なる」と言われ、受講生の方々には誠に申し訳ないのですが、自分勝手にも自分の勉強のために講師をお引き受けすることにしました。

実際に講師をやってみて感じたのは、自分の勉強になる、安定した収入になる、といったメリットに加え、意外にも「連帯感を抱ける」という点でした。講師を始めた当初はフリーになりたてでしたし実力も今よりさらに低かったわけですから「講師」と言っても、受講生の皆さんに限りなく近い身の上だったので連帯感を覚えるのも当然ですが、それから10年経った今でも教室に入ると「みんな頑張っているのだから私も頑張ろう!」という気持ちにさせられます。翻訳をやっていると引きこもってばかりで家族以外の生身の人間と接する機会は少ないですし、通訳をやっていると自分のダメなところばかり見えて落ち込みます。そんな限りなく孤独なフリーの仕事をしている合間に、ISSでやる気に満ちた生徒さんたちに囲まれますと、「嗚呼、一人じゃないんだ~~」と安堵したり励まされたりするわけです。言葉に対する好奇心や情熱、キャリア構築のための不安や苦労を共有できる貴重な機会となっています。

でも稀に、どう答えてよいか分からない質問にぶつかることがあります。それは「どうやったら一番効率よく英語をマスターできますか?」「最短で翻訳者になるためにはどうしたらいいですか?」「翻訳を勉強するのと通訳を勉強するのとでは投資回収率はどちらが高いですか?」といった質問です。翻訳も通訳も、それを生業とするためにとらなければならない国家試験のようなものがあるわけではありません。逆に翻訳検定や通訳検定を取ったからといって仕事が保証されるわけでは全くありません。少しの勉強ですぐにプロとしてやっていける実力の方もいらっしゃるだろうし、実力は十分なのにプロデビューする自信を持てずになかなか仕事に踏み出さない方もいらっしゃいますし、それはもう「自分次第」としか答えようがありません。また、私が特に仕事も家事も何をするにも要領が悪いせいだけかもしれないのですが、「効率的な勉強法」などない、と思っています。もちろん電子辞書の到来でいつでもどこでも単語がスピーディに調べられるようになった、とか、mp3になってカセットテープを巻き戻す手間が省けるようになった、とかそういった効率の良さは思い当たりますが、基本的には額に汗かき、指にペンだこ作り、「どうしてまだ私の知らない英単語があるんだー!」と英字新聞を引きちぎるくらい追い詰められてするのが勉強というのが持論です。

と、ここまで書いて、そういえば最近、英字新聞引きちぎってないなぁ~、ということに気づきました。そういう努力を怠っている証拠っ!ネジ巻き直して頑張らねばっ!

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