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プロの視点 ー 通訳者・翻訳者コラム


『通訳現場探訪』 ツール・文具編その②
(イヤホン)
和田泰治

第5回

ツール・文具編その③(その他のツール)

 

皆さんこんにちは。通訳現場探訪の第4回は、イヤホン(ヘッドホン)についてです。

 

同時通訳の現場ではブースの中に同時通訳の専用機材が設置され、イヤホンあるいはヘッドホンを接続し、音声を聞いて通訳をします。一応ヘッドホンも機材と一緒に現場で用意はされてはいるのですが、やはり直接身体の一部に装着するものでもあり、通訳者の多くは自分用のイヤホンを持参して使っています。通訳者が使うイヤホンやヘッドホンはほとんどがオープンエア型と言われる開放型のハウジングを使ったタイプです。同時通訳の場合、イヤホンを使って話者の声を聞きながら通訳をするのですが、同時に通訳者は自分自身の声も聞きながら声の大きさや細かい発話のニュアンスをコントロールする必要があるので、クローズド型のように密閉したハウジングを使ったイヤホンやヘッドホンでは外からの音が聞こえづらく通訳用には適していません。

昔のことですが、ゲーム関連の某社で通訳音声の収録業務がありました。収録場所はこの会社の、通常は声優さんが収録をしているスタジオで行われたのですが、機材はヘッドホンも自分のものではなくスタジオの設備を使って欲しいと言われました。実際に音声を聞いて同時通訳をしようとしたところ、話者の音声とかぶって自分の話す音声も同時にヘッドホンから聞こえてきてしまい通訳ができません。事情を説明したところ、声優さんの吹込みの際は自分の声が聞こえる必要があるのでそういう設定になっているとのことでした。『それでは通訳の声がヘッドホンから出力されないようすればいいんですね』ということで改めて通訳を始めようとしましたが、今度はスタジオのヘッドホンが密閉型のため、外からの音が遮断されてほとんど聞こえず、これも通訳ができません。一時間もすったもんだの末に、結局持参していた自分のイヤホンを使わせてもらうということでようやく収録をすることができました。

 

ただオープンエア型のイヤホンは外部に音漏れするので電車の中で音楽を聴くというような用途には適しません。帰りの電車でリラックスしたいので音楽鑑賞を・・・という方は別のイヤホンを用意する必要があります。

  

さて、筆者が通訳現場で使用しているのはこのイヤホンです。
デンマークの音響機器メーカーであるBang & OlufsenのA8というイヤホンです。

  

  

そもそも深夜に自宅で音楽を楽しむために購入したものです。耳にフィットする独特の仕組みと、特に中高音がきれいに出るということで音楽ファンの間で評価が高かったのですが、何故か通訳者の間でかなり普及しているのを知って驚きました。先日ご一緒した大先輩の通訳者であるSさんは「普及させたのは自分だ」とおっしゃっていました。別のところでは、某エージェントの専属通訳者の間で流行したのが始まりだというようなことも聞きました。いずれにしても口コミで広がったようですが、現在ではもう生産終了となっており、さらにコードが断線しやすい製品だとも言われているので、徐々に現場で見かけることも少なくなってきました。その他にも、ソニーのMDR-A30SPというヘッドホンが一時期通訳者の間で非常に流行ったということも別の通訳者さんから伺いました。残念ながら現物を所有しておりませんので写真は掲載できませんが、バーティカルタイプのイヤホンです。ケーブルを気にせず装着しやすいのが好まれたのではないでしょうか。但しこちらも既に生産されておりません。

  

イヤホンのプラグについても書いておきましょう。
通常のイヤホンはステレオミニプラグが多いと思います。通訳用の機材はステレオミニプラグもステレオ標準プラグもどちらも選択できるようになっているものが多いのですが、時折どちらかしか受け付けないという機材もありますので、写真のように変換プラグも持参したほうが安全です。

  

  

右がステレオ標準プラグ、左はモノラルのミニプラグに変換するためのプラグです。これも年に何回あるかないかの頻度ではありますが、音声を出力する機器がモノラルの場合があります。パナガイドのレシーバーで音声を聴かなければならないような場合です。こうした時にモノラルの変換プラグがないと、ステレオのイヤホンでは片側からしか音が聞こえないということになってしまいます。それほど高価なものではないので一応用意しておくと便利です。

  

こちらはイヤホンの延長コードですが、ポイントはボリュームコントローラーが付いていることです。

  

  

これも頻度は高くないのですが、通訳専用の機材やヘッドホンアンプがない環境でイヤホンを使わなくてはならない時があります。例えば、現場のパソコンにイヤホンやヘッドホンを直接接続して音を取るような状況です。通訳者は手元で聴いている音声のボリュームを細かく調節できないと非常に不便です。パソコンのコントロールパネルを開いて・・・などと言う面倒なことをしている暇はありません。そんな時はこのボリュームコントローラー付きのコードがとても役立ちます。因みにイヤホン自体にボリュームコントローラーが付いているものもあります。

  

今月は以上です。次回は現場ツール編の最終回としてタイマーなどその他のツールをご紹介致します。
ではまた次回までご機嫌よう。

和田泰治先生への質問 コラムについてのご感想や通訳現場についてこんなことを知りたいというご意見が
ございましたらこちらまで是非お寄せ下さい。

和田泰治 英日通訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 東京校英語通訳コース講師。明治大学文学部卒業後、旅行会社、 マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。 スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。

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