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プロの視点 ー 通訳者・翻訳者コラム


『通訳現場探訪』 通訳者の日常学習 和田泰治

第10回

通訳者の日常学習

 

皆様に新年のご挨拶を申し上げます。また、此度の地震により被災された皆様方には心よりお見舞い申し上げます。

 

さて、本年も引き続き様々なテーマについて通訳現場を取材し、読者の皆さんにできるだけ有益な情報をご提供して参りたいと思います。

 

今回はプロの通訳者の皆さんが日常どのような勉強や学習をしているのかを伺ってみました。フリーランスの通訳者は毎日異なる分野の現場に出てゆくことが多いため、繁忙期はその準備に忙殺されてしまうこともあります。通訳業務の準備以外に学習ルーティンを守って生活してゆくのは難しい面もあり、アンケートに協力して頂いた通訳者の中にも、準備以外には決まった学習を習慣化していないという回答の方々もいらっしゃいました。

 

具体的な学習ツールとして多く利用されているのはやはりインターネットメディアでした。具体的にはPodcastやYouTubeあるいはマスメディアの電子版などです。特にPodcastはパーソナルな内容のものも含めるとコンテンツが極めて多彩で、時事問題から専門領域に至るまで様々な分野からその都度選択することも可能だとのことです。ボディビルダーのPodcastを聴いているという方もいらっしゃいました。スマートフォンなどのポータブルデバイスで移動中や外出先でも容易にアクセスできる利便性も魅力のようです。大昔に主流だったカセットプレーヤーやラジオに比べると機能性、操作性は雲泥の差ですね。マスメディアの電子版に関しては、New York Timesのスマートフォンアプリ、インターネットラジオ、電子版Economistや電子版日本経済新聞などがあげられていました。

 

Podcastとマスメディアの電子版についての具体的な利用目的を伺ったところ、主に英語のインプットを強化するということでした。

●「理解できるまで何度でも繰り返し聴く」
●「メディアの電子版は日本語も英語もテキスト記事をリーディングし、音読をする。さらにアプリで音声も聴く」
●「音声のコンテンツについては最初にリスニングをし、次に同じコンテンツをシャドウイングし、そのあとさらに同時通訳をする」

といった利用法があげられています。Economistの電子版については1.5倍速、2倍速と再生スピードを調整することができ、リスニング力強化をはかっているという方もいらっしゃいました。なるほど電子メディアにはそういう機能もあるのですね。知りませんでした。

 

その他のメディアとしてはNHKの手話ニュースを活用して日本語から英語への同時通訳のトレーニングをしているという方もいらっしゃいました。通常のニュースよりもスピードがやや遅いのでトレーニングには適しているとのことでした。

 

コンテンツについてはニュースや時事問題のトピックに関するものが多かったのですが、イギリスのインターネットラジオで放送している、電話してくる一般の聴取者と日々の雑多なトピックをやりとりするコーナーを聴いているという方もいました。歯医者の予約の話とか、夫婦で寝室を分けるのが円満の秘訣だと思いませんかとか・・・。電話の音声で音質も良いとは言えず、英語のアクセントも相当きついのでリスニングは超難解とのことですが、トピックが偏らないように、様々なローカルな内容にも触れたいということで意識して聴いているそうです。これもなるほどと感心させられました。皆さんさすがです。

 

また、メディアのコンテンツを利用しない学習、トレーニングもご紹介しましょう。

●新幹線のニュースフラッシュや初見の映像など目につくもの、耳にしたものを次々に頭の中で通訳してみる。
●いろいろな人と会って話をする。老若男女、年齢も思考も多様な人達との会話から語彙力を鍛える。話し方も学ぶ。
●好きなタレントやスピーカー、実際に会話した相手の表現や話し方を真似してみる。
●自己表現力強化のため日記やブログを書く。
●目に見えているものを情景描写して言葉にしてみる。電車の中吊り広告や美術館で見る作品などなんでも自分の言葉で表現してみる。
●血中酸素飽和量を高めるために筋トレをする。
(注)これは????と思われるかもしれませんが、脳への酸素供給量を増やすことにより記憶力を司る海馬を含む脳の活性化につながり、健康増進だけでなく通訳の作業も含めた生産性の強化が期待できるからだそうです。
●その他にも、学習、トレーニングの際にはできるだけ英英辞典や国語辞典を活用して適切な語彙力の習得に務めるという方もいらっしゃいました。

 

今回情報を提供してくださった通訳者の皆さんは通訳者人口からすればほんの一握りですが、それでも実に様々な工夫を凝らし、皆さん各々が情熱を持って日常の学習に取り組んでいる姿が目に浮かぶようですね。筆者自身も本稿の取材、執筆を通して大変勉強させていただきました。さっそく出来そうなものは試してみたいと思います。

 

今回は以上です。これからも引き続き通訳に役立つ情報を掲載して参りたいと思っております。「通訳者の生活や通訳現場のこんなことが知りたい」というご要望がございましたら是非編集担当までご意見をお寄せ下さい。どうぞ宜しくお願い致します。

 

それではまた次回まで、ご機嫌よう。

 

和田泰治先生への質問 コラムについてのご感想や通訳現場についてこんなことを知りたいというご意見が
ございましたらこちらまで是非お寄せ下さい。

和田泰治 英日通訳者、アイ・エス・エス・インスティテュート 東京校英語通訳コース講師。明治大学文学部卒業後、旅行会社、 マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。 スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。

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