ホーム  >  Tips/コラム:プロ通訳者・翻訳者コラム  >  津村建一郎先生のコラム 第7回:関係代名詞の訳し方

Tips/コラム

プロ通訳者・翻訳者コラム

気になる外資系企業の動向、通訳・翻訳業界の最新情報、これからの派遣のお仕事など、各業界のトレンドや旬の話題をお伝えします。

津村建一郎先生

津村建一郎先生のコラム 『Every cloud has a silver lining』 東京理科大学工学部修士課程修了(経営工学修士)後、およそ30年にわたり外資系製薬メーカーにて新薬の臨床開発業務(統計解析を含む)に携わる。2009年にフリーランスとして独立し、医薬翻訳業務や、Medical writing(治験関連、承認申請関連、医学論文、WEB記事等)、翻訳スクール講師、医薬品開発に関するコンサルタント等の実務経験を多数有する。

第7回:関係代名詞の訳し方

今回は関係代名詞の訳し方について考えてみましょう。

関係代名詞は長文の英語では必ずと言っていいほどに出てきますので、その訳し方に慣れておくことが大切です。関係代名詞は簡単にいうと2つの文を1つの文にまとめるために接続詞的な役割をするものをいい、that, who, whose, whom, which, what などがあります。その例文を以下に示します。

1.They are named for the tiny organelles that convert food into energy.
(それらの名前は、食物をエネルギーに変える小さな細胞器官に由来する。)

この例文1は細胞内のミトコンドリアの説明をした文ですが、これを元のふたつの文に戻してみましょう。

2.They are named for the tiny organelles.
(それらの名前は小さな細胞器官に由来する。)

3.The tiny organelles convert food into energy.
(その小さな細胞器官は食物をエネルギーに変える。)

この様にthe tiny organellesが重なっていますので、文3のthe tiny organellesをthatという関係代名詞に置き換えて、ひとつの文としたのです。関係代名詞はその名前の通り代名詞的な役割もします。

1)関係代名詞の制限用法と非制限用法
上に示しました例文の関係代名詞thatの用法を「制限用法」と言います。細胞の中には何種類ものtiny organellesがあるのですが、それがthat以下の文で説明されることによって初めてミトコンドリアに特定されているのです。このように、先行詞を明確にするように修飾する関係代名詞の文を制限用法といい、先行詞(例文では文1のthe tiny organelles)のすぐ後に「,」(カンマ)を付けずに続けます。
一方、先行詞を明確にしない関係代名詞の文を「非制限用法」といいます。非制限用法は、先行詞のことを特に明確にはしないで、追加説明をするために使われます。以下に非制限用法の関係代名詞の例を示します。

4.It is well known as Down syndrome, which is a chromosomal disorder caused by the presence of an extra 21st chromosome.
(それはダウン症候群、染色体の21番が余分にある染色体異常、として良く知られている。)

この関係代名詞whichの先行詞はDown syndrome(ダウン症候群)ですが、ダウン症候群と言えば初めから明確になっていますので、制限用法の様にわざわざ説明して特定する必要はありません。非制限用法は、先行詞のことを特に明確にすることなく、単に説明を加えるために使われます。非制限用法では関係代名詞の前に「,」がおかれます。
非制限用法で注意する事は、制限用法と違って先行詞が特定できず、先行する文全体を指していることがあると言う事です。その例を以下に示します。

5.He got the mental examination, which was not surprising.
(彼は精神鑑定を受けたが、それは驚くことではなかった。)

文法的にはこのwhichの先行詞はmental examinationですが、文本来の意味としてはHe got the mental examinationの全体が先行詞となっています。このように 非制限用法でのwhich は文の内容を先行詞として説明する場合があります。

別の例を挙げてみましょう

6.The doctor said he could remove the cancer surgically, which was impossible.
(その医師は癌を手術で切除できると言ったが、それは不可能だった。)

このwhichの先行詞はhe could remove the cancer surgicallyという文です。

更に注意する事は、学校では「thatが制限用法で、whichが非制限用法」と説明されることがよくありますが、この説明は正確ではありません。正しくは「,(カンマ)」がおかれているかどうかで非制限用法と制限用法を区別します。

次の例文を訳してみてください。

7.There were few passengers who escaped without serious injury.

8.There were few passengers, who escaped without serious injury.

例文7は制限用法です。この文の関係代名詞who以下は先行詞であるpassengersを説明しています。つまり、どんなpassengersかと言えば「escaped without serious injury(重傷を負わずに非難した)」乗客で、それがfew(殆ど居ない=わずか)という事ですから、この文の訳は「重傷を負わずに非難した乗客はわずかであった。」となります。従って、他に多くの重傷を負った乗客がいたと想像されます。

一方例文8は、非制限用法です。この文の関係代名詞whoの先行詞はThere were few passengersという文全体で、who以下はその追加説明という事になります。つまり、「There were few passengers=乗客はわずか(少数)であった」という事の追加説明として「escaped without serious injury=重傷を負わずに非難した」があるのですから、この文の訳は「乗客は少数で、みな重傷を負わずに非難した。」となります。

この様に「,」(カンマ)ひとつで文の意味が大きく異なりますので、関係代名詞の制限用法と非制限用法の区別には注意が必要です。

2)関係代名詞の訳し方
英語の関係代名詞に相当する日本語での表現方法はありません。そこで関係代名詞の訳し方にはひと工夫が必要となります。

最初に説明した様に関係代名詞は簡単にいうと2つの文を1つの文にまとめたものです。そして主に言いたいことが最初の文章で、それを修飾したり細く説明するのが2番目の文章となります。従いまして、翻訳する日本語もその様に表現すれば大概はうまくいきます。ただし、原則は「前から訳す」ということです。

非制限用法の場合は関係節自体が補足説明の目的ですので、翻訳される日本語の表現も比較的簡単で、関係代名詞をand, or, but, because, forなどに置き換えて前から訳していけばうまくいきます。例文の5、6、8などがその例です。例文4も非制限用法ですので、以下の様に前から訳すことができます。

再掲4.It is well known as Down syndrome, which is a chromosomal disorder caused by the presence of an extra 21st chromosome.
(それはダウン症候群、染色体の21番が余分にある染色体異常、として良く知られている。)
⇒ それはダウン症候群として良く知られており、染色体の21番が余分にある染色体異常である。

問題は制限用法の訳し方です。学校では、特に制限用法の場合、後ろ(関係節)から訳して「~するところの・・・」と表現する様にと教えられます。その訳し方をしたのが例文1です。

再掲1.They are named for the tiny organelles that convert food into energy.
(それらの名前は、食物をエネルギーに変える小さな細胞器官に由来する。)

日本語で「(主語)は、~」と表現した場合、聴き手はその後に話題の展開(~)があると認識して、改めて話を聞き直します。さらに、日本語では主語が明確な場合にはその主語を省略してしまいます。例えば次のような例です。

被告は、昨年5月28日、●×区のホームセンター店内で、殺意を持って女性を背中から包丁で刺し、けがを負わせたとされ、検察側が冒頭陳述の中で『(被告は)東京・秋葉原で起きたような無差別殺傷事件を起こそうと考えていた』と指摘していた。」

従いまして、日本語では「(主語)は、」が先行詞で、話題の展開「~」が関係節と看做すことができ、その関係節の中にふたつの文が入っていると考えることができます。この様に理解して原則どおり前から訳しますと、以下の様になります。

再掲1.They are named for the tiny organelles that convert food into energy.
⇒ それらの名前は小さな細胞器官に由来していて、そこで食物をエネルギーに変える。

ただし、例文7と8の様に非制限用法と制限用法で意味が変わってくる場合の制限用法は、あえて後から訳した方が意味がはっきりしてきます。それでも前から訳すことは可能で、以下の様になります。

再掲7.There were few passengers who escaped without serious injury.
⇒ ほんの少数の乗客だけが重傷を負わずに非難した。

以上の様に、関係代名詞を訳す場合には、
①関係代名詞の格(主格、所有格、目的格)に注目し、それが係っている先行詞を確認する。
②その関係代名詞が制限用法か非制限用法かを特定し、文全体の意味を正確につかむ。
③意味や用法が確認できたら、英文法は忘れて日本語らしい自然な表現を考えてみる。
④原則は前から訳す。
と言うのがポイントとなりますので、試してみてください。

3)関係代名詞の省略
実際の英文では関係代名詞が省略されているケースが多く出てきます。英文法の本などでは「関係代名詞が動詞の目的語・前置詞の目的語になっている場合は省略することができます」と解説していますが、これは逆で、省略されている場合が大半で、むしろ書かれていることの方が例外的なのです。

例えば次の例を見てください。

9.The man over there is the patient I operated yesterday.
(あそこの男性は昨日私が手術をした患者です。)

この文ではthe patientの後に関係代名詞whom(目的格)が省略されていますが、英語圏ではこの様に表現するのが普通で、わざわざwhomを入れることの方が稀なのです。

また、There is/are ... , Here is/are ... , That is/are ... , Who is/are ... , It is ... などで始まる文で、関係代名詞が節の中で補語のとき、あるいは関係詞節の中にI thinkやI know等が挿入されているときは主格の関係代名詞も省略できますが、これも関係代名詞が書かれていることの方が例外的なのです。

10.There is no one works harder than you.
(君ほどよく働く人はいないよ。)

この文ではno oneの後に関係代名詞who(主格)が省略されていますが、There is構文なので省略可能と説明されます。しかしこれも、この様に表現するのが普通で、わざわざwhoを入れることの方が稀なのです。

どうでしょうか? 今回は関係代名詞の訳し方を解説していますが、極端に言ってしまえば、実際の英文ではwhat以外の関係代名詞は殆ど省略されています。従いまして、英文を読んでいく時にどれが関係代名詞の構文で、どの関係代名詞が省略されているのかを最初に見極める必要があります。

この見極めるポイントは英語の文型(第1文型~第5文型)で、文型上明らかに何かが欠けていることが解る場合に関係代名詞が省略されると言う事です。この点から、関係代名詞構文であることが解った場合には、上述の訳し方で自然な日本語に翻訳されると良いでしょう。

Copyright(C) ISS, INC. All Rights Reserved.