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プロ通訳者・翻訳者コラム
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津村建一郎先生のコラム 『Every cloud has a silver lining』 東京理科大学工学部修士課程修了(経営工学修士)後、およそ30年にわたり外資系製薬メーカーにて新薬の臨床開発業務(統計解析を含む)に携わる。2009年にフリーランスとして独立し、医薬翻訳業務や、Medical writing(治験関連、承認申請関連、医学論文、WEB記事等)、翻訳スクール講師、医薬品開発に関するコンサルタント等の実務経験を多数有する。
第11回:anyとsomeの訳し方
今回は、英文に絶対出てくるanyとsomeの訳し方について考えてみましょう。
日本人が英単語を覚えるときは、その英単語に相当する和単語を対応させて覚えます。しかし、これが日本人の英語力の向上を妨げるひとつの要因となっています。
1.不定代名詞とは
不定代名詞(indefinite pronoun)とは、人やモノ、場所、時間、数などを特定せずに漠然と表現する代名詞の総称です。例えば・・・all、none、any、some、other、neitherなどが該当しま
す。
She lived in Kyoto all her life.
← 形容詞用法 彼女は生涯を京都で過ごした。
Garbage is collected every three days.
← every+時 ゴミは3日おきに回収します。
None of the component was retrieved.
← none of+単数 部品はなにも回収できなかった。
You can join any time.
← 形容詞用法 何時でも参加できます。
If he had some time, he read the letter.
← 条件用法 彼に時間があったなら、その手紙を読んだ。
その不定代名詞の中でもずば抜けて出現頻度が高いのがanyとsomeです。
2.anyとsomeのイメージ
学校の英語の時間で教わるanyとsomeの意味は、「someが肯定文で使われて『幾つか』、それが否定文か疑問文になるとanyに変わる・・・」という程度ではなかったでしょうか?また、この説明ですと、someとanyは文体で使い分けられるだけですので、意味はどちらも『幾つか』と言うことになります。
では本当に『幾つか』のイメージで、anyとsomeが説明できるでしょうか?
1)someのイメージ
まずは、someのイメージをnativeがどの様に捉えているかを知るために、英英辞典で調べてみましょう。(LONGMAN英英辞典より)
● a number of people or things, or an amount of something, when the exact number or amount is not stated.
⇒ 正確な数や量を示すことのない、人や物の数あるいは何かの量
例文:
I need some apples for this recipe.
⇒ この料理には多少のリンゴが必要です。
The doctor gave her some medicine for her cough.
⇒ その医師は、咳止め用にいくつかのクスリを彼女に処方した。
● a number of people or things or an amount of something, but not all.
⇒ 全てではないが、ある程度の人や物もしくは何かの量。
例文:
She’s been so depressed that some days she can’t get out of bed.
⇒ 彼女はかなり落ち込んでいるので、数日はベッドから出られない。
Some people believe in life after death.
⇒ 一部の人々は死後の人生(世界)を信じている。
● formal a fairly large number of people or things or a fairly large amount of something.
⇒ (文語体)かなり多数の人や物、もしくはかなり大量の何か。
例文:
The donation went some way toward paying for the damage.
⇒ その損害の補填に向けて、何らかの方法での寄付が行われた。
● used to mean a person or thing, when you do not know or say exactly which.
⇒ あなたが知らないかもしくは正確に言えない人物や物を示すのに使う。
例文:
There must be some reason for her behaviour.
⇒ 彼女の取った行動にはきっと何らかの理由があるに違いない。
これらの意味や例文に共通しているイメージを考えてみますと、someは・・・
① 存在している(present)人や物について述べている ⇔ 存在が不確かな場合には使用しない。
② 複数の人や物について述べているが、ひとつや全部ではなくその一部。
③ 示している数や量は「適量」もしくは「適度」
この様に、someを使う時は、ある(いる)ことが確定している時に使うようです。例文を見ますと、その料理には必ずリンゴを使い、彼女は現在ベッドで横になっていて、寄付は行われており、理由がある(はず)と信じている・・・ということです。逆に言いますと、ある(いる)ことが不確かな場合にはsomeを使わないと言うことになります。
次に、二つ以上の複数を示す時に使うようです。ひとつ(oneやonly)ではなく、また全部(allやevery)でもない、どちらかというと3~5個(several)から半分程度を示しているようで、いわゆる「適量」もしくは「適度」と言う意味合いがあるようです。
以上をまとめますと、someのイメージは;
ある(いる)ことが解っている人や物の適量・適度を示す
と言うことができます。
2)anyのイメージ
次に、anyのイメージをnativeがどの様に捉えているかを知るために、同じく英英辞典で調べてみましょう。(LONGMAN英英辞典より)
● [usually in questions and negatives] some or even the smallest amount or number.
⇒ いくらかあるいは最小の量あるいは数。
例文:
Have you got any money?
⇒ お金がありますか?
Do you need any further information?
⇒ もっと情報が必要ですか?
They didn’t invite any of us.
⇒ 彼らは、私たちの仲間を誰も招待しなかった。
The universities have shown few if any signs of a willingness to change.
⇒ 変革する兆候があったとしても、大学側はそれを殆ど示していない。
● used to refer to a person or thing of a particular type when what you are saying is true of all people or things of that type.
⇒ あるタイプの人物や物について、あなたの言っていることがその様な人や物に全てあてはまる場合に、それらの人物や物を引き合いに出す場合に使用する。
例文:
Any child who breaks the rules will be punished.
⇒ ルールを破った子供は全員罰せられます。
I can see you any time on Monday.
⇒ 月曜なら何時でもお会いできます。
You can choose any of the books on the list.
⇒ リストにある本ならどれを選んでも結構です。
This excuse was as good as any other.
⇒ この言い訳は他のどれにも劣らない。
● used before the comparative form of an adjective to mean ‘even a small amount’.
⇒ 「多少なりとも」の意味で、比較級の形容詞の前に使用する。
例文:
I can’t run any faster. ⇒ これ以上速くは走れない。
Are you feeling any better? ⇒ 具合はよくなりましたか?
これらの意味や例文に共通しているイメージを考えてみますと、anyは・・・
① 疑問文ではおもに「有るか無いか」を尋ねている。
② 否定文では主に「無い」ことを意味している。
③ 肯定文では「該当する全て」を意味している。
この様に、anyの基本は疑問形の「有るか無いか(Yes or No)」にあり、否定文ではそれが否定されて「全くない(Not at all)」になり、肯定文では「全くある(all)」になるという感じの様です。
例文でみていきますと;
疑問文で:持っている金額に係わらず、お金が有るか無いかを聞いていたり、情報の内容に係わらず、他に情報が必要かそうでないかを聞いていたり、兆候があろうがなかろうがであったり、具合が良くなったのかそうでないかを聞いていたり・・・という意味。
否定文で:誰も招待されなかったり、これ以上速度を上げられなかったり・・・という意味。
平叙文で:ルールを破った子供は全員であったり、月曜なら何時でもであったり、リストに有る全ての本であったり・・・という意味になります。
従いまして、学校で習った「someが肯定文で使われて『幾つか』、それが否定文か疑問文になるとanyに変わる・・・」という解釈は、全然違うことになり、anyをsomeと同じ『幾つか』と訳すのでは不十分であることが解るかと思います。
3.anyとsomeの練習問題
anyとsomeのイメージが掴めた所で、練習問題を幾つかやってみましょう。
問題1:喫茶店に入るとウエイトレスがやってきて、次の様に言いました。
Would you like to drink?
この文の下線部に入るのは a. something b. anything のどちらでしょうか?
(解答は文末参照)
問題2:レストランに入って席に案内された時、ウエイトレスが次の様に聞きました。
Would you like to drink first?
この文の下線部に入るのは a. something b. anything のどちらでしょうか?
(解答は文末参照)
問題3:知人の家にお邪魔したとき、そこの奥様が次の様に聞きました。
Would you like something to drink?
そこで、あなたは次の様に答えました。
Do you have Coke?
この文の下線部に入るのは a. some b. any のどちらでしょうか?
(解答は文末参照)
問題4:以下の英文の和訳文に誤りがあれば、修正してください。
英文:But these evidences do not mean that animal beings evolved from any of those fishes.
和訳文:しかしこれらの証拠は、動物がそれらの魚類から進化したということを意味しているのではない。
*******************************
<練習問題の解答>
問題1:a. something
⇒ 喫茶店に入ったと言うことは、何か飲み物でも飲みながら一休みするのが目的ですから、ウエイトレスは「何かを飲む」という前提でsomethingと質問をしている・・・と言うことになります。
問題2:b. anything
⇒ レストランに入ったと言うことは、食事をするのが目的と考えられますが、本格的に食事をするのであればまずは「食前酒」と言うことになります。お客が「食前酒」を注文するかどうかウエイトレスには解りませんので、「有りか無しか」という意味でanythingと聞いた・・・と言うことです。
問題3:b. any
⇒ 知人の家の奥さんから「何か飲みますか?」と聞かれたことに対する返事ですが、一般家庭ですので、多種類の飲み物が揃っている訳ではないでしょうから、Coke(コーラ)は「有りか無しか」という意味でanyと聞いた・・・と言うことです。ちなみに、「ありますヨ」という答えがきたならば「Can I have some?(少しいただけますか?)」と続きます。
問題4:しかしこれらの証拠は、動物がそれらのいずれの魚類からも進化したのではないということを意味しているのではない。
⇒ 英文は否定文ですから、anyはnotと呼応して「~のどれも~ない」という全否定の意味になります。notの訳し方は英文を肯定文で訳したうえで「~ではない」とするのが一般的ですが、問題文の場合は「any of those fishes(それらの魚類の全て)」をnot(~ではない)と解釈して「それらのいずれの魚類・・・ではない」としたうえで、文全体は肯定文にした方が和文として自然になります。
完
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